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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 「SOSの子守唄」

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 パンを水で押し込んだあと、念のため、タキオン通信で呼びかけてみたけど、やはり応答はない。電波通信でも呼びかけてみたら、ノイズの中に規則的な微弱信号をキャッチした。
「音波信号? これって、まさか、SOSモールス信号?」
こんな原始的な通信手段など、数百年使われていないはず。でも、電波に干渉して、かすかだけど音波の痕跡をキャッチ出来る。これを手がかりに船を探し出せるかもしれない。

 アンドロイドを起動しようと、格納庫に行く途中にタックを目覚めさせた。あの時、ケイがこの子を連れて行くように助言したのは、やさしさのように感じたわ。あれから2年以上経っている。まさかケイ、寂しがったりしていないかしら。
「エル。必ず戻って下さい」
ケイは出航前、私の船から着陸船で基地に降下する時、モニター越しにそう言った。もしあの時、目の前に彼がいたら、私は彼を抱きしめていたかもしれない。でも、一人で救助に来たのは、これが私に与えられた使命だから。どんな危険な任務でも、感情を挟み込んではいけない。今の私には感情など、邪魔なだけ。
 タックにドライフードと水を与えて、頭をなでてあげてから、その部屋を後にした。

 格納庫はとても寒く、騒音がうるさい。以前は何とも思わなかったけど、今はこんなところ嫌い。
 アルコーブに設置されたアンドロイドのストレージケースを開封して、起動コマンドを入力すると、その男はすぐに目覚めた。首を動かして周囲を確認した後、
「俺の役割の概要を述べてください」
ケイの時と同じ、無表情で話した。
「難破船のクルーの捜索を手伝ってちょうだい。あなたのマニュファクチャー番号は?」
「俺は、SS3100−634P00412J」
「私はエル。あなたの名前は、『J(ジェイ)』よ。よろしく、ジェイ」
「理解した。指示をください。エル」