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優しさに感染した男
優しさに感染した男
novelistID. 61920
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グッド・バランス

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「ただ今、臨時ニュースが入りました。」
画面の中のキャスターが顔を青くしながら話した。
「巨大な、巨大な隕石が我々の星に近づいているとのことです。科学者たちは緊急会議を開いているようですが回避は不可で、絶望的な状況のようです。」

 このニュースは一分と経たない内に世界中を駆け巡った。『もしも、隕石が衝突しなかったらどうする、イタズラに不安を煽ってしまう報道はしないほうがいい』という意見もあったが、状況は最悪で、科学者たちは長い討論をせずとも巨大な隕石が自分たちの星を粉々に破壊する未来が予測できた。
 
 人々は悲しみに暮れた。世界中では暴動や犯罪が多発し、まさにこの世の終わりが刻々と近づいているようだった。テレビでは巨大な隕石の映像が放送され、誰もがその圧倒的大きさに、『これが来たら必ず自分たちは終わりだ』と恐怖と絶望を感じさせた。そんな中、一人の科学者Yがある解決策を提唱した。
「・・・それはみなさんが一斉にジャンプをすることによってこの星を大幅に宇宙空間からずらし、隕石を避けるのです。私の計算によると、この星に住んでいる人々の82%が一斉にジャンプをすれば隕石を避けることが出来ます。」
 この馬鹿げた策は世界中から大バッシングを受けたが、巨大隕石を目前に他の策が出ず、渋々世界各国は科学者Yの策を飲み込むことにした。

 そして隕石衝突当日、世界各国は最新鋭の衛星電波を使い、ジャンプをするタイミングを計っていた。このプロジェクトには世界中のホームレスから大統領まで参加していた。自分たちが住んでいる星の危機に皆、必死だった。そんな中、現場を仕切っていた科学者Yが口を開いた。
「みなさん、カウントダウンを始めます。飛ぶだけでいいんです。力を合わせ、我らが星、Xを救いましょう。いきますよ・・・」
 あっという間に数字は小さくなり・・・
 3・・・2・・・1・・・




 しかし、宇宙空間に惑星Xの姿は無かった。そこにあるのは見るも無残に破壊された星の大量の破片だけである。

一部始終をみていた惑星Zの住人の会話が静かな宇宙空間に響く。
「それにしても、何をやっているんだX人の奴らは・・・」
「ああ。バラバラの場所で飛びやがって・・・」