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霊感少女   第二章  二部

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呪札







「……ひっ…」


口を手で塞いでいた 相楽が 声を漏らした



隣に居た雅人が
驚いて ビクンとしている



「ど…どした?」
「……見えない…の?」
「……?」

目を凝らして
踊り場の壁を 見ている



目の前の壁に


   【帰れ】


と 血が滴る文字が
こんなにも ハッキリ
相楽に 見えているのに


雅人には
見えていないのか?



相楽は 慌てて
雅人の腕を握った



自分 一人だけ
別の空間に 居るのではないかと 確認したかったのだ



雅人の腕の感触が
しっかりと
手の平から 伝わってくる



確かに
雅人は 此処に居る



何だか わからない雅人が そのまま 吸い寄せられる様に 階段を 上がって行った


相楽も 雅人の腕に 触れたまま 引き寄せられてしまった



踊り場の壁がある
一番 上の階段を
雅人が



足を踏み込んだ



…瞬間




血文字が滴り落ちる
白く塗り潰した
ペンキの壁が




パキパキと音を鳴らし









ボロボロと
剥がれ落ちた





目の前のペンキが
一瞬にして


崩れ落ちたのだ




無数の
剥がれ落ちた
白いペンキの破片が


床一面に 広がり



踊り場のコンクリートが
剥き出しになる







………所々に



黒ずんだ
文字が





残されたまま




雅人は 何も気にせず
踊り場に立った




足元に
パキパキと 音を鳴らす
ペンキの破片




………これも
見えないの?




踊り場の手摺りに
雅人は 寄り掛かり


天井や
踊り場の壁や
屋上へのドアを
見回している







雅人の足元に





小さく
身を丸めた
血塗れの少女が




座り込んでいるとも
知らずに






  【…助けて】





相楽は 雅人から
目を離し



声のする方を
見た






黒ずんだ
文字の場所から





無数の顔が




…苦しそうに
もがきながら




……雅人に






腕を 伸ばしている






呪札の封印が
解かれている




雅人の
【霊を呼ぶ力】で



呪札の効力を
弱め……



結界に
閉じ込められた霊達が





雅人の波動に
救いの腕を




伸ばしている






………こんな事って
あるのだろうか




相楽は 全身の毛がよだつのを 震えながら
感じていた



黒く滲んだ文字の中に



まだ 読み取れる
血文字が
幾つか ある



松本が 見つけた
【園】の文字が
書かれた場所を



見た





  【園部 香奈】



はっきりと読み取れる



その文字の
真下に





写真で見た
【園部 香奈】の顔が……



 「……香奈…さん」

相楽が 香奈の名前を
口にした


うごめく 唸り声が
聞こえる中で



香奈の声が
届いた





 【助けて…あげて】




香奈の視線の先に

三橋が見つけた
呪札がある




  【坂本 由美】

と 書かれた
血文字の…上に



……しかし
由美の姿が ない



相楽が 香奈の顔を見ると


優しく 微笑んだ顔から
涙を 流し


  【……早く…】

と 唇を動かした



相楽は 無我夢中で
スカートのポケットから
小型のナイフを取り出し


呪札を 削ぎ出した



……お願い…
間に合って!!





札が めくれ


……ポトリと
足元に



落ちた





   【ガゴン!】



同時に 鉄の鈍い音が
鳴り響く





相楽が 音の方へ
振り返ると









血塗れの少女が
雅人の背中に
すがり付き





相楽を見て
ニヤリと 笑った





雅人が 屋上への扉を
開いた音だったのだ




   「雅人!」



相楽が 叫び声を あげた