師匠と弟子と 2
「鮎太郎の事は嫌いじゃないけど、将来性の無い人には嫁ぎたく無いしねえ……」
そう言って横目で俺を見た。
「なら、今度の親子会で決めようか。ちゃんと出来て、贔屓筋にも好評なら認めるし、駄目な噺家との評価なら梨奈は嫁にやらないし、勿論交際も認めない。というのはどうだい」
これは受けて立たないと男としてそして噺家としてならないと思った。
「じゃあ、本当に今度の親子会で良い評判を戴けたら梨奈ちゃんと交際出来るのですね」
女将さんに確認すると
「ああ、あたしが認めるよ。師匠にはあたしからちゃんと言って聞かせるから」
それを聞いて俺はちょっと安心した。と言うのも師匠がこの世で唯一頭が上がらないのが女将さんなのだ。
師匠の家を後にして歩いていると、後から梨奈ちゃんが追っかけて来て
「頑張ってあたしを貰ってね。上手く行ったら今度は頬じゃなく口にしてあげる」
そう言って俺の腕をギュっと抱きしめたのだった。これはやらずには、おられないと思ったのだった。