悪いよ。
芽生子さんの問い掛けに、二葉さんは答えます。
「─ 悪いよ。」
「もしかして…またお母さん?」
頷く二葉さんに、芽生子さんは尋ねました。
「で、今度は 何言われたの?」
「…直ぐにでも、結婚しろって。」
思いがけない言葉に、芽衣子さんの内心は 穏やかでなくなってしまいます。
「え?そんな人が、いた、の──」
首をゆっくり横に振って、二葉さんは否定しました。
「─ 相手も、早く探せって。」
二葉さんに、そう言う相手がいた訳ではないと判り、安堵する芽生子さん。
そんな様子には気づかず、二葉さんは憤慨し続けます。
「とにかく私に、結婚しろって言う理由…何だと思う?」
思案する芽生子さんに、二葉さんは忌々しげに口を開きました。
「不要物を、整理するため!」
「…話が見えないんだけど」
「娘が嫁入り道具として 親元から色々持って行ったお陰で、家の中の食器や家具がごっそり減った話を、知り合いから聞いたんだって。」
「─」
「使ってない物を、私が嫁入り道具として持って行けば、色々減るから家が片付くんだって!」
「…そんな理由で、二葉のお母さんは……結婚を薦めてるの?」
呆気に取られる芽生子さんに、二葉さんは 苦々しげに呟きます。
「─ 私…怒っても許されるよね?」
「まぁ、そうかな。。。」
「アンテークの食器や家具ならともかく、当面使わない邪魔なものを 娘の嫁入り道具に持って行かせようとか…普通考える?」
「…」
「何で私が、廃品処理のために 結婚しないといけないの!」