小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

月の光に照られて。

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「『もれいづる月の かげのさやけさ』だね」

 雲から漏れてきた月の光に照られて、霜月さんが呟きました。

「百人一首だよ?」

 背後に立っていた初音さんは、違和感を感じて 霜月さんのスカートの裾に目をやります。

「上の句が『秋風に たなびく雲の たえ間より』で…」

 初音さんは、得意げな霜月さんの口上を遮りました。

「…スカートの裾から覗く、フサフサした感じのものは、何?」

「尻尾。」

 答えながら霜月さんは、パタパタ振って見せます。

「今夜は…満月だからねぇ」

 尻尾を目で追う初音さんに、霜月さんは 当たり前の様に説明しました。

「─ 光を浴びると、生えてきちゃうんだよね。」

「え?」

「先祖に…狼男でも、いたのかもしれないねぇ」

 何かに思い当たった初音さんは、急いで周囲を伺い 声を潜めます。

「隠さないと! 急いで!!」

 必死の忠告を、のんびりと受け流す霜月さん。

「大丈夫だって! 魔女狩りとかが ある訳でも ないんだし。」

「─ でも、誰かに見られたら…」

「向こうが勝手に、勘違いしてくれるもんだよ? ファッションなんだって。」

「…え?」

「それなりの服きてたら、コスプレしてると 思ってくれるみたいだしね…」

「─」

「本物だって告白してみても…冗談にされて、信用して貰えなくてねぇ。。。」

 身体から力を抜いた初音さんは、しゃがみ込んで 夜空を仰ぎました。

「世の中って、私の手には負えないかも。」
作品名:月の光に照られて。 作家名:紀之介