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引き篭りの親VRゲームにハマる

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あらすじ
VRゲームを引きこもりの子を持つ親がやる話




息子が引きこもりして10年
家での会話は一切なくて部屋からも出てこない
以前に一度だけ、今後の将来を話し合うために無理やり部屋に入ってからというもの、息子はモノに対して暴力にうったえるようになった。息子に何があったのか、私が部屋を覗いた際にVRが見えたが、あれで遊んでいるのだろうか? だとしたらあんなモノ買うべきでは無かった。仮想世界が現実世界からの逃げ場になるのなら、あんなゲーム、壊さなければいけないだろう。しかし、本当にそんなことをして大丈夫なのだろうか、私は引きこもりを扱う専門家を尋ねることにした。



「息子さんはVRをしているんですね」
相談を一通り聞いた担当者が最初に言った言葉だった。つづけて担当者は言った。

「息子さんと話し合うのは一旦止めて、息子さんを理解するのに力を注ぎましょう」

理解もなにも父親にとっては理解してるつもりだった。息子は軟弱なだけで、現実からただ逃げているのであって、こちらから理解する意味なんてないのだから。しかし、担当者はあくまで私に原因があるかのように考えているようで。
そんなはずはないだろう。私に人としての落ち度があるはずないのだから。
この担当者は何もわかってない。

「教育に失敗なされたから、息子さんは自立できてないのですよ?」

それは違う。私が息子を養い甘えさせてしまったのは事実だとしても、息子はそれに甘んじてるだけなのだ。実際、同じような立場の引きこもりでも、ちゃんと自立した事例を知っている。この担当者はそんなことも知らないのか?

この担当者は一貫して私から息子に歩み寄るよう勧めてきた。しつこいので半分聞き流したが、VRを使って息子と話し合う提案には望みがありそうに感じた。
しかし担当者はそれをしないそうで、あくまで私にさせたがる
それを拒り続ける私を、まるで器の小さな男かのように見下しの目を向けてくる。私は腹が立ち、つい、やる約束をしてしまった。


担当者は息子がやっているだろうVRゲームを教えてくれた。オンライン型の冒険ゲームらしい。ネットで友達を作ったりしてワイワイ遊ぶものだそう

最近のVRシステムは脳をゲーム世界にリンクできるそうで、ヘルメット型の機械を被ることで誰でも手軽にリアルな冒険を楽しめるらしい。

それが原因で息子が引きこもってるというのに、まさか私がオンラインゲームをやらなきゃいけないなんて。

担当者「引きこもり40歳以上の人口が50万人を超えてますから、多くの人がこのゲームに参加しています。まずは父親とは名乗らずに、ゲームだけを純粋に楽しんでみてください」

楽しんでくださいと言われても、面白いかは私が決めることである。勝手に決めつけないでほしい
いくら、バーチャルといえネトゲの延長である。ネトゲなら何度かプレイしたが全く面白くなかった。

心の中で不満を呟いている間にヘルメットデバイスを被される父親

担当者「ログインIDはこちらで用意しますのでプレイヤー名を決めてください」

名前なんてどうでもいいですから、好きに決めてください。

「では息子さんの共感を得やすいように、息子さんの名前から一字使いましょうか」


言葉半分は聞き流している。かなり適当な受け答えをしていた父親。プレイヤー名は清十郎に決まった。その他の設定も決めてもらい

清十郎の情報は
年齢40歳
プロフィールひきこもり
ゲーム世界での職業はゴーストハンターに決まった

担当者「では清十郎さん、しばらくお休みなさい。」




2話
ログイン中、担当者の声がおぼろげに聞こえてくる
「私の声が聞こえますか?、ゲームの中にいる間は浅い睡眠状態になります。起きたいときは視界の端にあるログアウトボタンをタッチしてください」


「なるほど。基本的な仕組みは、昔やったネトゲといっしょなんだな」
そう呟いて清十郎は前を歩き始めた





視界はやや暗い。タイマツがフロアを照らしてる。分かれ道が幾多に続いていて、迷路の様になっている。

清十郎が昔プレイしたVRは自然豊かな世界観で視界はどこまでも透き通っていた。 吹き抜ける気持ちいい風や美味しい空気は、とても居心地が良くて日がな一日ゲームの中にいることもあった。
しかし、ゲームの良さはそれだけで、他の要素(モンスター狩り等)は楽しくなかったから、1ヶ月もしないうちに飽きた。それ以降、VR製品の改良版が発売されるも、同じようなものと思い興味がそそられることはなかった。


清十郎は迷路をさまよい続けた。隠し扉や魔法武具を見つけ装備。ゲームの仕組を手探りで理解する。しかし、30分歩き回ってるのにモンスターやプレイヤーを見かけない。ゲームとしては、まだ何も始まっていない状況にイライラしはじめ、ログアウトボタンをタッチしようとした瞬間、背後から悲鳴が聞こえた。

轟音と地響きが背中を追いかけるようき迫ってくる。

「ようやくモンスターのお出ましか。」

清十郎は元来た道を戻り、モンスターと戦っているプレイヤーを見つけた。
モンスターは清十郎を見ると奇声をはっしながら突進してくる。よく見るとフロアをギッシリとモンスターか埋め尽くして、大名行列のように追っかけて来ている。
まるで神風特攻隊のようにタックルしてきて自滅するモンスターたち。戦うつもりなく、自爆するだけのモンスターにHPがどんどん削られていく。

HPが減る度に痛みを感じる
痛みに耐えることがてきず一旦ログアウトをしようかと思ったが、プレイヤーは闘い続けている。自爆する相手と戦っても意味なんてない。逃げた方がいいと説得した。しかし、プレイヤーは
「ダメなんです。この世界で私の息子が引きこもりになっているのです。ここで引いたら、また最初からプレイしなきゃいけない」
そのプレイヤーも、どうやら清十郎と同じような目的でゲームに参加しているようだ。
そのプレイヤーは逃げすに痛みに耐えている。なぜ逃げないのか考えたら
隠し扉に逃げ込む方法を思いついてないか、または隠し扉の存在に気づいてないのかもしれない。清十郎が逃げ道を教えると凄く怖い形相で
「え? 逃げ込む部屋があるんですか? どこ? どこですか!」
必死な勢いに押され、プレイヤーの手を引っ張り隠し扉のある場所に走った。
モンスターは二人を見失い素通りしていく。

「助かりました。ありがとうございます。私のハンドルネームは……」

清十郎がこの時感じた達成感はいいようがないものだった。

清十郎は自分が過去してきたネトゲを振り返り思い出していた。
ゲーム内での感謝は、あくまバーチャルであって電源を切れば、なかったことになる。経験値はいくら集めてもプレイヤーとの力差が生まれてゲームバランスが壊れ、つまらなくなるだけ。
しかしこのゲームはリアルに疲れるし、リアルに痛いし、リアルに感謝される。ゲームの目標でさえ「息子を助ける」というリアルになものになってる。バーチャル性を殆んど感じないゲームであるのだ。

清十郎は察したように考えていた。それを遮るようにプレイヤーはお礼を述べていて