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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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ティム・シュルツのために

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(語り手:ロザリー・メイ)

 あれは、昨年の12月のことでした。私はある罪で逮捕され、裁判を受けました。判決は、懲役3年・執行猶予3年。私は裁判が終結したその日から、嘆きと後悔の深いうねりの中に居ました。罪を犯した日から今日まで、涙しなかった日はありませんでした。

 裁判期間で留置されていたある日のことです。1枚の毛布にくるまって寒さをしのいでいたとき、体がほどよく温まったので、私は眠りに落ちました。

 数分後のことです。私の目の前に、1人の男性が現れました。
「…!」
 私は彼の顔を見るや身の毛がよだち、全身が震えました。私の目の前にいたその男性は、私が遊び半分で突き飛ばして転落死させてしまった、私の同僚だったからです。もしかして、私に復讐をしに来たのかしら。そう思った私は、泣きそうになりました。
「ティム!やっぱり私のこと、恨んでるのね…」


 しかし、彼は、穏やかな顔で首を横に振って、穏やかな調子で言いました。
「いいや、僕は君のことを恨んでいない」
 彼の意外な言葉に、私は再度息をのみました。
「えっ、どうして?私、あなたを殺してしまったのよ?結婚して、とても小さい子が居るあなたを…」
 彼は言いました。
「ロザリー、たとえ悪意がなくても、君が僕を殺したという事実は、決して消えない。でも、僕は願っている。ロザリーが以前よりも立派な人になって、社会に再び受け入れられることをね」

 彼のこの発言を聞いて、私もいよいよ感情が高ぶり、目頭も目尻も熱くなりました。彼は、既に私を許していたのです。私の胸から、声なき叫びがあふれてきました。
(私の罪は、誰にも許されないと思ってた……。そのうえ、被害者本人から私を励ます言葉をかけられるなんて、考えてもいなかった)

 私は、肩を震わせて下を向き、しゃくり上げて泣きました。彼の心に何の曇りもないと分かったからです。
「今は、泣いていいんだ」
 うつむいたままの私に、ティムは優しくそう言いました。― このあとのことは、もうほとんど覚えていません。
「君の手にかけられる者は、僕で最後にしてください」
 先ほどよりも小さく、ティムの声が聞こえました。確かに、彼の声でした。


 目を覚ますと、ティムの姿はどこにもありませんでした。しかし、私は心の中で言いました。
「私、もう危険なおふざけはしない。あなたができなかった代わりに、きっと豊かな人生を送るからね。ミスター・ティム・シュルツ」

 - Fin -