口紅 ~rouge~
異性
小学五年の頃
同級生の女子から
バレンタインチョコを
貰った
バレンタインの意味は
わかっていた
けれど
何故 『僕に 』なのか
理由が わからなかった
その日を 境に
僕は 異性の存在を
意識するように
なった
それまで
僕が見ていた
何も存在しない
教室の風景に
異性の姿が
映り込む
意識する
無意味の中
動揺と違和感が
混ざり合う異変
まるで
罪を犯していない
犯罪者の様に
身を潜め
怯える僕がいた
そして
裁判が開かれる
数名の女子に囲まれ
自白を強要されるが如く
決断を迫られる
ホワイトデーと
名付けられた
失効日
『 返事は?』
返事とは
何と答えれば
正解なのだろう
黙り込む僕に
くだされた刑は
執行猶予
六月『 修学旅行』
「一緒に行動して」
僕は
「はい」と
返事を返し
裁判は閉廷した
作品名:口紅 ~rouge~ 作家名:田村屋本舗