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人魚姫

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Revenge





姫は人間世界に
舞い戻り


妖艶な姿を
惜しみなく晒し
王子の城を
訪れると


一瞬にして
悩殺された王子は
恩人である
身分の低い町娘を
無残に見限り


姫の虜に
成り下がる


甘い口説き文句を
唱え


宝石財宝を
貢ぎ


我が妃にしようと
求婚を迫った





幸運の未来を
見事に撃ち砕かれた
町娘


国王の膝に
擦り寄り
若い豊満な肉体を
押し付け


「なんと嘆き悲しい事
 国王の御子息ともあろう方が
 恩知らずと国中に知れ渡れば
 この国の崩壊は免れぬでしょう」


国王は生唾を飲み込み
はちきれんばかりの
胸元を食入るように
覗き


「週に一度
 我の相手をするのであれば
 考えてやらん事もない」


町娘は謙虚に頭を下げ


「喜んでご期待にお応え致します」


口角を吊り上げ
微笑んでいた
 




こうして
戦略結婚は進められ
王子の意志など
通る筈もなく


盛大な
結婚式が
行われる事になった


王子は姫に
妾にならぬかと
言い寄り


姫は船上で
挙式を挙げるのであれば
申し出を受けると
条件を出した


姫の復讐は
まだ終焉した訳では
ない


姉様達に
人間世界の下劣さを
報告していたのである



姫の希望通り
船上で開催された
結婚披露宴


船の手摺りに
寄り掛かり
披露宴など
見向きもせず


海を眺めている姫


波間から
姉様達が現れ
姫の尾鰭を引き裂いた
刃物を姫に手渡し


「魔女から奪ったナイフよ
 王子の心臓を刺し
 その血を足に塗りなさい
 魔女の掛けた魔法は解け
 人魚に戻れるわ」



結婚の儀式を終え
初夜を迎えようと
寝室に篭るのを待ち


寝室に身を隠し
潜んでいた姫


陽気に祝酒を飲み
ほろ酔いの王子が
町娘と連れ立ち
寝室へ現れた


服を脱ぎ散らかし
戯れる姿は
醜態と異臭を放ち


姫はナイフを振り上げ
王子の背中に
刃先を振り落とそうとした瞬間


恐怖の形相に変貌した
町娘が醜い悲鳴を
発した





怨霊を纏った
姫の姿は
世にも恐ろしい
奇獣の姿を醸し



気が狂った町娘は
唾液を垂れ流し
哀れな姿で
ケタケタと笑いだす


初夜を迎える
聖域のベットへ
失禁した王子は


狂った町娘を盾に
情けない震えた声で
必死に命乞いをする


「金でも宝石でも
 何でもやるから
 助けてくれ」


金も宝石も
人間世界意外では
何の価値もない事を
知らないのだろう


哀れな人間ども


姫は くだらない人間の屑を
殺めて罪を背負う事が
馬鹿馬鹿しくなった






人魚界の姫たる
高貴な自覚が芽生え


醜い王子の心臓を刺し
滴る血を身に塗るくらいなら


聖なる海の泡へと
消える事を
望み


窓から
海へ身を
投じていた





Air Fairy

本文




緩やかな波に
揺られ


姫の身体が
泡へと蕩けてゆく


姫は
穏やかな心を
取り戻し
安らかな微笑を
浮かべていた


姉様達が
波の狭間で
悲しみに泣き


最後まで人魚の心を
失わなかった妹を
誇りに嘆く姿を見て


太陽の神が
海の中へ光を翳した




透き通った
美しい妖精が
泡に蕩けた姫に
手を差し出し


『ようこそ
 空気の世界へ

 快く貴方を
 迎い入れましょう』


姫の身体は
空気のように
透き通り


海面から浮上してゆく



そして
人魚姫は


静寂な海を見守る
空気の妖精として
人魚界で伝説が
語り継がれている



~END~
作品名:人魚姫 作家名:田村屋本舗