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ヒトサシユビの森 3ナカユビ

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3.ナカユビ




「搬出用にユニック2台回しとけって言ったろ。どうなってんだ、亮太!」
早朝の道の駅に坂口の怒鳴り声が轟いた。ひと晩中工事責任者の坂口と施工業者、配送業者の間に挟まれ疲れきった身体を亮太は奮い立たせ、絞りだすように大きな声で返事をした。
「さっき会社を出たところだと電話がありました。もう少し待ってください」
「待てるわけねぇだろ。見ろ、もうあんなに客が並んでるんだぞ。段取り悪いな」
道の駅の正面ゲートの前に、すでに300人ほどの来場客が列をなして開門される瞬間を待っていた。
「すみません!」
坂口専務の直属の部下になって2年余。亮太はようやく坂口が本気で怒っているのか、口汚いもの言いをしているだけなのか、区別できるようになっていた。
坂口に怒鳴られることが会社の中での自分の役割なのだと自覚してからは、感情を害することはなくなり、坂口との良好な上下関係が築けるようになった。