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御手紙 葉
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碧い涙 ~アオイナミダ~

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 そう零すと、ミアの心の糸が切れたのか、彼女は僕の胸に顔を埋めて大声で泣き続けた。その泣き声は悲痛ではあったけれど、今までのつらかった気持ちを全て海に吐き出して空っぽにするような清々しさがあった。
 僕はミアの頭をぽんぽんと叩き、「もう大丈夫だから」と何度も声を囁いた。
「浩介のこと、ずっと感じていられたのに、突然ふっとその繋がりが切れてしまったような気がして。だから、浩介がもう私のことを忘れてしまったんじゃないかと怖くなって。でもね、やっぱり浩介のことだから、何かあったんじゃないかって信じたくて。でも、信じられない時もあって、」
 ミアの瞳からぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちていく。そして、僕は気付いた。彼女の涙が青色に輝き、砂浜に落ちた瞬間に、透き通るような青い石に変わることに。
 僕の中で全てが繋がる。何故、あの貝殻のブレスレットに青い石が付いていたか……それは彼女が泣きながら、つらくとも僕を想って作ってくれたからだ。彼女はやっぱりあの時、泣いていたんだ。僕は本当に彼女の優しさに心を震わせて、そして嬉しくなって「ありがとう」とつぶやいた。
「私の涙、砂浜に落ちると固まっちゃうんだ。青く透き通った石になるの」
「うん。全部わかったから。少し、落ち着いた?」
「やっと浩介に会えた。それだけで十分だよ」
 彼女はそう笑って、涙をふわりと散らせた。
「私がいない間に、他の女の子に手を出さなかった?」
「大丈夫、それはないよ」
 よし、と彼女はうなずき、目元を拭った。
「それより、ミア。僕、君にプレゼントを持ってきたよ」
「え……プレゼント?」
 ミアがきょとんとした顔で僕を見つめる。
「貝殻で作ったブレスレット、壊しちゃっただろ。だから、この海岸の貝殻もう一度集めて作ろうかと思ってたんだけど、もっといいものが見つかったから」
 僕はそう言って、足元のその青く輝く石を見つめて、笑う。

「うわあ、こうして見ると、綺麗だね」
 彼女はそのブレスレットに繋がれた青い石を見つめて、興奮したような声を上げる。僕も自分の腕に繋がれたそのブレスレットを宙に掲げながら、「こっちの方が」と零す。
「こっちの方が、お互いにずっと繋がってられるだろ」
「うん、そうだね」
 ミアはもう一度水が弾けたような、月明かりの差した美しい笑顔を見せた。
「ミアに、一つだけ言いたいことがある」
「何?」
 ミアはわずかに期待を篭めた声を僕に返してくる。
「来年になったら、ミアにプレゼントがあるよ。そうしたら、ミアはもっと僕に会えるから」
「え、え? どうして?」
 ミアが目を輝かせて僕の腕をつかもうとする。僕はそれを避けて、立ち上がった。
「それは、内緒。来年までのお楽しみってことで」
「それはないでしょ、浩介! ちょっと、聞いてるの? 逃げないでよ、バカ!」
 僕達はそうやって砂浜の上を踊って遊びながら、夜の海に二人の一時を浮かべていつまでも語り合っていく。
 来年、僕はこの海のすぐ近くにある海洋大学に入学しようと思ってる。もしそこに入れたら、ミアとずっと一緒にいることができるようになる。だから、ミアの為に僕は勉強を精一杯やっていたんだ。だからーー。
 僕はミアのその微笑みを見つめながら思う。
 もう、あんな綺麗な涙は見せなくていいよ。笑ってる方が、もっと一番に綺麗だから。


 碧い涙