Dr. Clown
とある精神科。中央にテーブルと椅子2脚。椅子には医者が座っている。脇に看護婦とロボットが立っている。
看護婦「お次の方」
看護婦、少年登場
少年「(早口)よ、宜しくお願いします」
医者、カルテと少年を交互に見て、目で話せと合図をする。
少年「(早口)あの……僕、人と違うんです……僕、とっても…」
医者「ぼえ"。ゔぇええ!があ"あ"ああ"ーー!!」
机から錠剤を引っ張り出して、飲む。
少年「!?」
少年を睨みつけ、殴りかかろうとする
看護婦、無表情でロープを手に持ち、医者の首に巻きつけ、思いっきり引っ張る
少年「!!?」
ロボット、近づいて来て看護婦に電磁波を流す
看護婦、右脚から倒れる
ロボット「失礼致しました」
医者「続き」
少年「(普通の速度)あ、はい。僕…人前に立つのが苦手で……あの、途端に空間の流れが遅くなるんです。話終わってふと周りを見ると、ゲラゲラと笑いが起こっているんです。恐ろしいほど早口だって。」
医者「過集中だな。(Peace50を取り出し最後の1本を吸う)。なぜそんなことが起こると思う?」
少年「おそらく、自信のなさからきてるんだと思います。」
医者「一言……お前は屑だ!そして、この俺こそが、人類の最高傑作!孤高の存在だ。」
少年「……は?」
医者「俺は人に馬鹿にされないように、他人を蹴落としてでも成り上がってきた。」
少年「その気持ち、分かります。でも、あなたの話を聞きにきたんじゃな…」
医者「くだらねえことで精神の監獄に来て相談を受けている時点で、お前は俺みたいな有能な人間にはなれない。失格だ。」
少年「誰もあなたみたいになりたいなんて言ってないじゃないで…」
医者「黙れ!いいか!!(時折、錠剤を飲み、痰を吐きながら)エゴに生きろ!!ヒエラルキーの頂点に立て!」
少年「……………!?…………よおく分かりました」
少年去る
ロボット「お疲れ様でした。今日も皆さん、生きた魚の目をして出ていかれました。」
医者「(微笑んでいる)」
ロボット、看護婦去る
薄暗くなる
医者、25秒間微笑み続けている
突如、豹変し24秒間床に吐き捨てた自分の痰を白衣でゴシゴシ擦ったり、頭を床に打ち付けている。
45秒間、涙を流し、ひたすらに謝罪の言葉を呟いている。
(これらの時間間隔は医者の意図的なものではなく、無意識的なものである)
ぷつっと暗転
フェードイン
看護婦、涙を流して立っている
看護婦「先生……私もようやく気づきました。私が暴力を与える立場、暴力を受ける立場なのは、サイコパスな私を治療するためでもあったんですね。50回目にして、私もようやく人の痛みを感じることができるようになりました。」
医者「おお…そうか。」
看護婦「先生が患者に対してあのような態度をとっているのも、ちゃんとした理由があったんですね。自分自身のことばかりに関心を向ける人たちのために、反面教師となって自身の醜さを実感させようとしていたんですね。」
医者「………」
看護婦「でも自分の身を犠牲にするのはもうやめてください!もうボロボロじゃないですか!!」
医者「……私の最大の快楽は、人に奉仕することだ。結局は自分のためにやっている。私のエゴにすぎないんだよ…それが私の人生だ。」
看護婦「先生……」
看護婦、泣き崩れる
フェードアウト
ED