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<旅>

少女、電車に乗り、自由席に座る

暫くして紳士な男性、少女を横切った後、戻って来て話しかける

男「スミマセン、お隣宜しいですか。」

女「…どうぞ。」

男「失礼します。 (欠伸をしてから)…何処に行かれるのですか。」

女「……東京です。雑司が谷まで。」

男「雑司が谷!いいですね。実は僕の故郷なんですよ。それにしてもお一人ですか。」

女「………本当は親に反対されていたんですけど、どうしても今日行かなきゃいけないと思って、黙ってここまで来てしまいました。」

男「芸術創作活動の基本的原理は模倣(ミメーシス)である。」

女「……何です、それ。」

男「アリストテレスの教えさ。僕は、このことは日常生活においても言えると思う。」

女「……J・D Salingerの名作でも参考にしろって言いたいんですか。」

男「お、流石、知ってるね!」
男、満面の笑み

男「冒険をし、困難に直面し、それを乗り越えることによって、プロファウンドな思想家になることができる。」

女「あなたって洒落てるのね。でもそうやって知識をひけらかすのは良くないと思うわ。」

男「それは誤解さ。僕は君に、岩を登るためにとりつく場所を教えているまでさ。」

女「うん、分かったわよ。…ありがとう。」

男、ふと空を見上げて

男「もうそろそろだな。失礼。」
男、去る

女「(はあ、と溜息)結局寂しかったんじゃん。」

少女、にこやかな表情で電車を降りる


End
作品名: 作家名:玄哉