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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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周波数だけで世界を平和に!

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「パパ、まだラジオなんてやってるの?」

「父さんはこの仕事に誇りをもっているからな」

「ラジオなんて誰も聞かないよ」
「かもな」

娘に指摘されつつも、ラジオのブースに行く。
誰にも聞かれてないように見えて、実は聞かれているのだ。

とくに、俺の婚活ラジオは。

「この周波数は宮城県在住の女性です。
 ビビッと来た人は番組までご連絡ください」

「こちらの周波数は北海道在住の男性です」

ラジオの流す周波数に、人間の情報を載せて発信する。
ラジオを聞いている人で、自分の好みに合う人には
周波数が共振……つまりビビッと来て恋に落ちる。

そんな婚活ラジオが最近ちょっと人気になって来た。

『今の周波数の女性と連絡がしたいです!』
『この男性のことをもっと教えてください!』

人間の周波数にビビッと来た人から連絡が帰ってくる。
こうして、ラジオの周波数を経由して人がつながっていく。

俺はこの仕事が大好きだ。


婚活ラジオを初めてしばらくすると、
人気はさらにうなぎ上りになって、応募が殺到していた。

「こちらの周波数にビビッと来た人は、ご連絡ください」

最近では、宇宙へと流れた周波数をキャッチして
宇宙人が地球にやってくるほど大人気になっていた。

そして、終わりの日は突然訪れた。

「どういうことですか!? ラジオを辞めろって!」

「先日の宇宙人襲来事件は覚えていますね?」

「ですが、市長。あれはおとなしく帰ったじゃないですか!」

「今後、もっと危険なものがくるかもしれないだろう。
 それに、周波数を使いすぎて電子機器にも影響が出ていると
 市民から苦情が出ているんだ」

「そんな……!」

「というわけで、今日の放送で最後にしてくれたまえ。
 このような周波数テロは」

「…………」

最後のラジオ配信日。
俺は重い空気のままラジオブースへと入った。

「……これが最後の配信となります。
 最後なので周波数を流して番組に連絡されても答えられません。
 なので、最終回は……どうしようかな」

何もやることがない。
普通のラジオみたいに音楽でも流そうかと思ったとき。

ラジオブースにスーツの男が入って来た。

「なんですか! あんたたち!」

「私は政府の勅命で参りました、陸軍大佐です。
 今日がこの放送の最終日と聞いてやってきました」

「軍人さんがどうして……」

「周波数によって電子機器に影響が出ていることはご存知ですね?」

「はい。それが原因で番組が終わるので」

「問題ありません、番組は続けてください」

「問題ないんですか!?」

「正式には問題はあります、だからこそいいんです。
 軍としてはあなたの放送を軍事利用して、
 兵器を無力化するために使いたいと思っています」

「無力化……!! そんな手が!」

今や武器はどれも電子機器になっている。
俺の放送でそれらが役立たずになれば、平和へと前進するだろう。

「協力してくれますか? 世界の平和のために」

「もちろんです!!」

政府のお墨付きをもらったことで、
俺は前よりもまして周波数を使いラジオを配信した。

「この周波数は、東京都在住……あ、僕と同じ場所ですね。
 東京都在住の女性からの周波数です!」

ますますラジオは人気になり、国内外からも依頼が飛んできた。
そして、軍事利用されたことで、世界は一気に平和になった。



いがみ合っていた国と友好関係が結べた記念に、
なぜか俺の家族がその国に招待された。

「前はあんなに戦争だ戦争だといがみ合っていたのに。
 やっぱり武器がなくなると、仲良くなるんだなぁ」

しみじみと平和への歩みを認識しながら国へやってきた。
けれど、想像していたものとはまるで違っていた。

「武器めっちゃあるじゃん!!」

周波数で無力化したはずの武器はまだ残っていた。
ぜんぜんラジオの効果はなかった。

唖然としていると国の代表者がやってきた。

「やぁ、よく来たね。以前はあんなにいがみ合っていたのに
 こうして友好関係を結べて本当によかったよ」

「いやいやいや! まだ戦争する気満々じゃないですか!
 武器が無力になったから、仲良くなったのでは!?」

「我が国の軍事力をなめないでもらいたい。
 たかが周波数ごときでダメになる武器はないよ」

「それじゃどうして、急に友好的になったんですか……!?」

状況が読み込めていない俺の前で、
元敵国の代表は俺の娘を横にはべらせた。

「君の流したラジオの周波数を聞いて、ビビッと来たんだ。
 これこそ運命の相手だと確信したよ。
 嫁の国を攻撃するわけないじゃないか」

「ということなのお父さん、私たち結婚するわ」

婚活ラジオによる国際結婚で世界に平和が訪れた。


「これからよろしくお願いします、お義父さん」

「君にお父さんと呼ばれる筋合いはない!!」

そう言い返したかったが、世界の命運がかかっていると
苦笑いで娘を送り出す以外の選択肢はなかった。