あなたが残した愛の音。
第5章 マイボール
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夏休みの途中で、夏季大会のゲームに敗退し、3年生が引退した。その後、博之はキャプテンに指名され、チームを率いることになった。そしてユニフォームを新調し、キャプテンナンバーの『4』を着けることになったのだった。
2学期の初め、レギュラーメンバーの5人には、新しい革ボールが1個ずつ支給される。そこに自分の背番号を、マジックで記入するのだが、博之にはある計画があった。
「先生、ボールに番号を書いてください」
「え? 私が書くの? どうして?」
「先生に書いてもらわないと、意味が無いから」
「おまじないか何かなの?」
「そんな感じです」
博之は、新品のボールと極太マジックを手渡した。
「じゃ、“4”番て書けばいいのかな?」
「“103”です」
「え?」
「1(ヒト)・0(オー)・3(ミ)です」
「わたし?」
ひとみ先生は驚きながらも、嬉しそうに笑った。それから毎日、博之はそのボールで練習するのだった。
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「その時のボール、今も大切に持っています」
「今でもですか?」
「はい。僕が引退する時に、代わりのボールを寄付して、“103”(ヒトミ)ボールを貰っておいたんです」
「でも、それだけ仲良くされていたんだったら、周囲から変に思われなかったですか?」
「うん。確かに」
作品名:あなたが残した愛の音。 作家名:亨利(ヘンリー)