尖閣~防人の末裔たち
「燃料をセーブして飛ばなきゃいけないから。。。1時間ぐらいかな。ギリギリまで燃料を使いきって飛べるスピードで1時間。それ以上スピードを出すと、石垣島まで届かない。。。1時間も昇護は持つのか?!」
浜田の声が沈む。
土屋は、振り向いた浜田に曖昧に首を傾げるとマイクを口元に寄せた。
「島田さん、1時間掛ります。燃料をセーブしないと石垣島まで飛べませんので最大速度は出せません。昇護は、もとい、負傷者はそれまで持つんですか?」
-先生。何とかしてくれよっ-
土屋の口調が強くなる。
「いえ。。。耐えられないでしょう。。。あと1時間もすれば出血性ショックで間違いなく死亡します。それに、石垣島に病院はいくつもありますが、弾丸の摘出が出来る医師がいるかどうか疑問です。できれば自衛隊那覇病院に運びたい。。。とにかく急いで本艦に着艦してください。まず出血多量から救いましょう。」
まだ会ったことがないのにも関わらず、島田の苦悶の表情が目に浮かぶような声だった。
作品名:尖閣~防人の末裔たち 作家名:篠塚飛樹