飛翔
踵を鳴らして空へ挑むと
摑んだ光を離さないように
時間が止まれば良いと思った
目に見えるライバル達よりも
軸の定まらぬ自分が怖くて
回転技から遠去かる日々は
体が重たい悪夢みたいだ
到達点を決めるのはいつも
気まぐれな天使が降りて来る度
僕はこの場所で祈りを捧げ
新しい靴に履き替えていた
もう一度あの夢に触れてみたかった
沢山の歓声に包まれて
迷いの消えた心の中に
透明な銀河は駆け抜けてゆく
体に染み付くチャイコフスキーが
鼓膜を伝って足を震わせる
呼吸を整えたリンクの上に
身を置く僕が白鳥になるなら
届いた花束に羽根を添えて
視界の果てまで飛んで行きたい