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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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生まれ変われ!脱皮系人間!

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「暇だなぁ」

安定を求めて地球防衛軍の国家試験をパスして就職。
でも、この仕事がこんなにも退屈だとは思わなかった。

「仕事がなさすぎて、脱皮しちまうぜ」

「先輩、こんなところで脱皮しないでください」

後輩は止めたが俺は脱皮して古い皮を脱ぎ捨てた。

「ほら、見て。脱皮直後だから肌つるつるだぜ」

「あーーはいはい。落ちた皮もちゃんと捨ててくださいね」

「おばけだぞーー。ほれほれ」

俺は脱皮した皮を持ち上げて後輩に近づける。

「先輩、もうふざけないでください。
 仮にも地球防衛軍なんですから」

「あのな、普通に考えて地球に脅威なんてこないって。
 それは地震とかの災害か、人間同士の争いだよ」

こんなやり取りをいつも続けている地球防衛軍。
この緊張感のなさを知ったら、地球外生命体もさぞ驚くだろう。

脱皮した皮は職場に捨てられないので、
しょうがなく自分の家に持ち帰ることに。

ゴミ袋に詰めていると、ふと思いついた。

「……そういえば、今まですぐに脱皮していたけど
 もっと溜めて脱皮したらどうなるんだ」

脱皮はお腹が減るのと同じように、体の体内時計でタイミングがわかる。
でも、脱皮を溜めて溜めて……脱皮すればどうなるか。

「もしかして、つるつるの肌が永久になるかも!?」

完全に女子のような考えにたどり着いた。



「先輩、脱皮してないんですか?」
「ああ」

「肌、粉ふいてますよ」
「ほっとけ」

「地球防衛軍、たまに社会見学されるんですから」

わざと脱皮しないことで皮の劣化は進んでいく。
それでも来るべき解放の瞬間に備えて、俺は脱皮を控える。

3ヶ月ほどたって、もう内側から爆発するような脱皮衝動にかられる。

「よ、よし! 脱皮するぞ……!」

べり。
背中に亀裂が入って、脱皮すると生まれ変わったような解放感が待っていた。

「気持ちいぃ~~! サウナから出た瞬間みた……あれ!?」

声が高くなっている。
それに胸が重い。

「うそ!? 私、女になってる!?」

溜めて溜めて、溜めて脱皮した先には女になっていた。
脱いだ皮は分厚い着ぐるみのようだ。

「ふふふ、いいこと思いついちゃった♪」

私は女の体と男の体を楽しむ方法を思いついた。

翌日、地球防衛軍に出勤しても、誰も私を疑う人はいない。
それもそのはずで、男の皮を着ているからだ。

定時で仕事が終わると、どこかで皮を脱いで、女の姿で街に出る。
クリスマス間近で寂しさに飢えた男どもがちやほやする。

「男の体じゃこうはいかなかったなぁ」

二重生活の楽しみを心から満喫していた。

数日後、地球防衛軍にやってくると後輩にしてきされた。

「あれ? 先輩、顔に亀裂入ってますよ。
 そろそろ脱皮したらどうですか?」

「え?」

鏡を見てみると、男の皮に亀裂が入って破れていた。
補修することはできるが顔なのでどうしても目立ってしまう。

「まずい……この皮もそろそろ限界なのかな」

とはいえ、この皮を捨ててしまえば、今の仕事も失う。
毎日女の体で好き勝手できるのも、男状態の日々あってこそ。

「……あ、そうだ! もっかい溜めて脱皮しよう!」

男→女 になったのであれば、一度女→男 に戻ればいい。
脱皮を我慢するのは少しつらいが、必死に耐えた。

3ヵ月後。

べりり。
背中に亀裂が入って、私はさなぎから生まれるように外に出た。

「よし、これで男に……ってあれ!? 声が高い!?」

慌てて鏡に向かうと、まだ女だった。
脱皮でスタイルや顔つきは大きく変わったのに、性別は変わってない。

「そんな! 前に性別変わったのは偶然だったの!?」

いままでの男の皮は内側がツギハギだらけでもう限界。
いつ、職場で皮がぜんぶばらけるかは時間の問題。

「い、いや、諦めるわけにはいかない。もう一度やらなくちゃ!!」

今から国家試験を受け直しても、覚えた知識はもう残ってない。
この脱皮にすべてがかかっている。

3ヶ月、6ヶ月……1年。

職場には「ものすごい敵が出てきたので倒しに行きます」と
長期休暇申請を出して、脱皮を貯める日々が続いた。

そして、ついに脱皮の日が訪れた。

「誰にも会わずにもう1年……。
 これだけ脱皮しなければ、きっと性別も変わるはず」

びりっ。
内側から飛び出すように、脱皮がはじまった。

「あーあーあー。おお! 完全に男の声だ! 大成功だ!」

脱皮しながらも声で性別をチェックする。今度は男だ。
上半身が皮から出ると、外気に触れた体はみるみる大きくなり……。



『こちら、巨人が現れた現場に来ています!!
 現在も地球防衛軍が懸命に戦っています!!』

「先輩が言っていた"敵"ってこいつだったのか!!」

後輩は光線銃で戦っていた。


「脱皮しすぎると巨大化するなんて……聞いてないよぉ!!」

顔も体もすっかり生まれ変わった俺は、
記念すべき地球防衛軍の最初の敵として永遠に記録に残された。