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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ギャンブルダイエットで勝負!

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「ギャンブルダイエットにご参加いただいてありがとうございます。
 それでは、これから皆様にチップをお渡しします。
 このチップでどんどんギャンブルをして、痩せてくださいね!」

男からチップを受け取ると、
なんだかお金を使っていないからか得した気分になる。

「ギャンブルダイエット、本当にうまくいくのかなぁ」

「上手くいきます! 痩せれば彼女もできて万々歳ですよ!」

スタッフは思い出したように付け加える。

「なお、ここでチップを増やさない限り
 このカジノから出ることはできません。
 食事はたっぷりあるので心行くまで楽しんでください」

参加者は散り散りになって、それぞれギャンブルを始めた。
ポーカー、ルーレットなどあるが、わかりやすくスロットへ向かう。

「よし、ダイエット開始だ!」

スロットのレバーを回した。

 ・
 ・
 ・

気が付けば惨敗。
残りのチップは10枚。

「あははは、俺って才能ないなぁ」

チップがなくなったらどうなるんだろう。
カジノダイエットスタッフに尋ねると、笑顔で答えた。

「はい、あなたのチップは山田さんの全財産になってます。
 あなたが負けると、全然関係ない山田さんが破産します」

「は!?」

「お子さんが大学行くために毎日積み立てて、
 毎日夜遅くまで残業して、早くに亡くなった妻のために働く。
 そんな山田さんを後戻りできない借金地獄に叩き込みます」

「待てよ! なんでそんなこと!?」

「これはカジノダイエット。
 リスクを意識させるのが大事なんです。
 自分が不幸になるだけだったら、本気にならないでしょう」

「そんな……」

「あなたのお金も今誰かが使っています。
 そのことを意識して、さぁ、残りのチップで勝負してください」

俺の顔から余裕が一気になくなった。
10歳くらいは老けたと思う。
あぶら汗が流れて奥歯がカチカチと音を鳴らせる。

けれど、ここから出ることはできない。
俺の残り10枚のチップで、1つの家族をつぶしてしまう。

「負けられない……!」

俺はポーカー台へと向かった。


勝って、負けて、負けて、勝って、勝って、負けて。
何度も何度も勝ち負けを往復して、じわじわとチップを貯めた。

最後にチップを元手の2倍になるとやっとスタッフが解放してくれた。

「カジノダイエット、お疲れさまでした。
 チップを目標まで増やしたのでこれで終了です」

「でもダイエット失敗してるじゃないか」

カジノで誰かの不幸を賭けるストレス。
自分の人生を誰かにゆだねられているストレス。

ストレスの板挟みが過食へと走らせて、
俺の体重はカジノダイエット開始よりも太っていた。

「いえいえ、ダイエットは大成功ですよ」

「もういい。金を見るだけでもう吐き気がする……」

「またのご利用、お待ちしています」

「するか!!!」

カジノダイエットで痩せるどころか、
単にトラウマを植え付けられただけだった。

「まったく、とんだガセだったな……」

帰り道にコンビニに入って弁当をレジへ運ぶ。
店員が手際よく会計を済ませると、

「お会計480円です」

「あ、はいはい。400……うっ!!」

財布からお金を出したとたん、一気に気持ち悪くなった。
お金を見るとあのギャンブルの恐怖が体をかけめぐる。
もはや食欲なんて消し飛ばされた。

「ま、まさか……カジノダイエットはここからなんじゃ……」



数日後、俺の体重は病的なほど激減した。

今では病院で出される食事で命をつなぎとめている。
金を見なければいいのだから……金さえ見なければ……。