フルーツ特番で力をあわせて!
ル~ル~ル~ル~♪
「はい、ということで始まりました。
『西のうりからこんにちは』。
今日も豪華なゲストをそろえています」
「「 うえぇーーい 」」
カメラに向かってフルーツたちは元気に手を振る。
キウイにいたっては、ここがアピールの場だとして
必死に産毛をふさふさ動かしている。
「さて、今日もこのフルーツのみんなで
楽しくトークしていこうと思うんですが
今日はさらにゲストをお呼びしています」
「まさか……野菜のやつじゃないだろうな!?」
「バナナさん、裏番組をいじらないでください」
「むきむき★」
バナナはこつんと自分の頭をこづいた。
ここまでがバナナの一連のネタ。
裏番組の『べじらぶる!』には負けていられない。
今回も高視聴率をかけた戦がはじまる。
「では、お呼びしましょう。
いちご界のスーパースター、とちおとめさんです!!」
会場が拍手につつまれ、スモークがたかれる。
ゆっくりと上げられた幕の奥には……何もいなかった。
「あれ!?」
打ち合わせと違う。
すぐさま司会のカンでCMを入れてフォローした。
『このあと衝撃の展開が!』とかなんとか入れて。
「と、とちおとめさんの登場はCMのあと!」
ひな壇のフルーツたちがずるるっとコケた。
これでさもお笑いみたいになった。
CMが入るとすぐさまマネージャーのあまおうに連絡する。
「なんかぁ、とっちーぃ、今日は出たくないってぇ」
「はぁ!? それでドタキャンしたんですか!?」
「本人の意思がぁ、大事じゃん。いちごいちえだしぃ」
「管理あますぎるでしょ!!」
楽屋には準備していないとちおとめがいた。
「とちおとめさん、なにが不満なんですか!?
このままじゃ番組が終わってしまいます!」
「つか、あたし今日みかんがいるって聞いてきたんだけど。
本番みたらみかんいないし。来た意味なくない」
「みかんさんは、リハでの運動会企画で
ちょっと体をぶつけてしまって悪くなったんです。
傷んでしまうと、ほかのみかんにも影響するので……」
「あーーもうやるきなくしたーー。
ヘタだけあげるから、それでなんとかしてよ」
とちおとめは自分のヘタをちぎって渡す。
こんなものをお茶の間に届けたら、それこそ期待外れで視聴率ダウン。
「お願いしますよ、とちおとめさん。
今この瞬間にもバナナさんは黒くなっていってるんです」
「知らないし。あたしが出たくないのに出したところで
面白いこといえるわけないでしょ」
「いい加減にしろ!!」
思わずとちおとめをひっぱたいた。
フルーツに暴力はご法度だが、今はこれしかない。
「あんた何様だよ! あんた一人で番組を面白くできる?
笑わせるな! 最初からそんなこと期待してない!」
「えっ……」
「あんたがいて、ほかのフルーツがいて、
支え合うから番組が面白くなるんだ!
あんた1粒の力でどうこうできると思いあがるな!!」
とちおとめは、先まで真っ赤に染まった。
「私……自分が恥ずかしい。おごっていたわ。
みんなにありがたがられて……。
コンデンスミルクに肩までつかっていたのね……」
「そのたとえはわかりづらいですけど」
「甘いってこと」
「わかってます」
とちおとめがスタジオに戻ると、一気に活気を取り戻した。
「では、登場していただきましょう!
とちおとめさんです!!」
幕が上がると、出てきたのはとちおとめではなく
キャベツやピーマンの野菜たちだった。
「なっ……お前たち、いったい何をしにきた!?」
まさかライバルの裏番組の出演者がやってくるなんて。
いったい何をしでかすつもりだ。
「どうもこうもない。俺たちは裏切者を連れ戻しにきただけだ。
お前だってもうわかっているんだろ」
「裏切者!?」
リンゴ、キウイ、バナナ、いちご、ナタデココ、なし、もも……。
裏切者なんてここにはいない。
「裏切者のくせにフルーツの中に溶け込むなんてな」
「ふざけるな! ここにはそんなフルーツなんていない!!」
「じゃあ力づくで連れ戻させてもらう」
野菜たちは、視界のスイカを連れてスタジオを後にした。
あまりの衝撃の展開に、番組は過去最高視聴率を記録した。
作品名:フルーツ特番で力をあわせて! 作家名:かなりえずき