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ハルニレの樹 第二章の一

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車上同棲してるみたい、だね。えへへ

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 悦司は、大好きな涼子と一緒に北海道に行くための資金を稼ぐ為に、週三回だったコンビ二のバイトをオーナーにお願いして四回に増やしてもらい、その内のシフト二回を、夜九時から翌朝七時まで稼げる時間を増やしてもらった。
 その他にも進学塾と家庭教師の掛け持ちバイトで何とか北海道に行くための最低限の資金に目処がついた。
 掛け持ちバイトの日々は、涼子に会える時間が物凄く少なかったけれど、会えない分だけ涼子と一緒に過ごせる僅かな時間が、前よりもかけがえの無い何よりも貴重だと実感した。
 涼子も同じようにスーパーのバックヤードで野菜を切ったり、生鮮品のラッピングをしたり、レンタルショップのレジを打ったりして、悦司と同じように掛け持ちバイトに頑張った。
 決してリッチな旅にはならないだろうけど、それでも充分だった。

 旅の計画は、先ず列車で城之崎の悦司の実家に行って一泊して、実家の皆に涼子を紹介する。
 旅館のお客さんの送迎用に使っている三台の車の内、一番小さなワゴン車を借りて出発し、国道に沿って最初に金沢に行く。
 金沢には涼子の実家がある。とりあえず、涼子の両親に挨拶をしてから、日本海側を走ってひたすら北上し、北海道を目指す。
 お互いの実家に立ち寄るのは、特に涼子の実家に立ち寄るのは、男の心理として悦司は、何か引き目と言うのか、照れくさいと言うか、ある意味、微妙な後ろめたさの様な疾しさに似た感じはあったけれど、涼子のたっての願いでもあったから悦司は立ち寄ることにした。

 旅行の資金は決して潤沢では無かったけれど、悦司の義兄が車と一緒にETCとガソリンのカード、それに加えて茶封筒を持たせてくれた。茶封筒の表には鉛筆で『支援金』と下手な字で書かれていた。
 ずっと前に、義兄に電話で夏休みに彼女と北海道に旅行に行く計画をしているとこっそり話した。
 そして、突然に彼女を連れて実家に帰るのも何だから、事前にそれとなくタイミングを見計らって父母と姉に前振りをと悦司は義兄に頼んでいたのだった。
 それを聞いていたからか、悦司が彼女を連れて実家に帰るのを皆は楽しみに待っていたようだった。
 そのせいか姉や父母は、お菓子やジュースに缶コーヒーと飲み物。レトルト食品にカップ麺とか、とか、しかもそれらは箱入りワンカートン単位で。いくら実家が旅館だと言っても、(それ、売り物だろ!)って思ったけれど……。
 それと、父がいつの間に作ってくれたのか、こっそり、「困った時に使え」と、クレジットの家族カードを手渡してくれた。
 ほんと有難いな、と悦司は感謝した。


 そうやって、ワゴン車の後ろには、てんこ盛りの食料と飲み物、それに寝袋と毛布にクッション、おまけに涼子は旅館でお気に入りになった枕まで積み込んで、しばらくの車上同棲生活みたいな二人の夏休みの旅は始まった。

 助手席の涼子が、悦司を見つめて云った。
「車上同棲してるみたい、だね。えへへ」
作品名:ハルニレの樹 第二章の一 作家名:ヒロ