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シナモンティー

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喫茶店へやってきた。
メニューを見て飲み物を選ぶ。
私はコーヒーが飲めないので、紅茶の中から選ぶことにした。
初めて目にする紅茶を発見。

シナモンティーなるものを注文する。

5分後、私の前にシナモンティーが置かれる。
すると紅茶の脇にスプーンと、一本の木のようなものが置かれている。
場に流れる一瞬の動揺と私の頭の上には 『⁉︎』のマーク。


落ち着いて紅茶を一口、ふくんでみる。
うむ。紅茶はいたって普通のものである。恐るるに足らず。

ということはこの木のようなものがシナモンか。
しかしどう使えばいいのかわからない。
そもそもシナモンがなんなのか知らない。
シナモンって粉でしか見たことない。
アップルパイにのってるあれでしょ?

バックの中にはiPhoneが潜んでいる。
今の時代ネットの力を借りればすぐに使い方がわかるだろう。
しかし、どこかのラジオパーソナリティーが言っていた、あの言葉を思い出す。




『Don’t 思考停止』




略してドンシコ。
開けかけたバックのチャックを元に戻す。
考えてみる。




まずは挨拶代わりに(?)シナモンを使って紅茶を混ぜてみる。
そしてまた紅茶を一口。




…味に変化はない。
これではシナモンティーと呼ぶに値しないだろう。ザ・ストレートティー




第2案
とある芸人が売れていない頃にやっていたという、ダクト飯法を試してみよう。
これは飲食店の換気扇(ダクト)から煙を吸い、白飯を食らうというもの。
この原理をシナモンティーに応用するのだ。
スティック状のシナモンからはしっかりとシナモンの香り。
これは期待できそうだ。
いざ鎌倉。






ふむふむ。
口では紅茶の味を楽しみつつ、鼻からはシナモンの香りをふんだんに味わう。紅茶の定義としては合っているのかもしれないが、なんだか忙ない。

私が今日喫茶店に来たのは、本を読むためだ。この方法だと両手がふさがってしまう。
読書の合間に、本に目を向けたまま片手で紅茶を飲むのがイケてる読書の仕方だと思っているのに、これではそれができない。
かといって、口をタコのようにしてシナモンをはさみながら紅茶を飲んでいたら周りからなんと思われるか。
隣の席には若い女子2人組。
私のメンツを保つためにもこの方法は避けたい。



となると残された方法はひとつ。





そう、シナモンを嚙るのだ。
さながらカルパスを嚙るように、シナモンを嚙るのだ。

嚙ることで初めてシナモンティーが成立する。
そこにシナモンティーが生まれるのだ。



でも、見ため木だよ?
おれ、木かじるの?
この世に生を授かり27年、木をかじったことは一度もない。
まさか初めて木をかじるのが喫茶店の中だとは…
想像したこともないけど、かじるとしたらもっと極限的な状態でしょう。
サバイバル的な。




時刻は14時25分。
穏やかな、なんてことのない日曜の午後ですよ。
昼食を食べたばかりでお腹も空いてないのに。


現実から目を背けたくなるが、もうかじるしかない。
これが私の出したファイナルアンサーだ!
右手に木を持つ。(もはやシナモンと思っていない)


(ガブリ)





……木じゃんかーほらー かっらい木じゃんかー味はシナモンだけれどもー


水を飲んで、口の中を整理する。


はい、ここで結局現代人の味方iPhoneセンパイのご登場。
答え合わせです。

正解は"シナモンを使って混ぜる"でした!混ぜるだけ!最初にやったやつ!

ふりだしに戻るというね。
かじりかけのシナモンで紅茶を混ぜる。
やっぱりザ・ストレートティー



しかしあれこれ考えている間、私の席に届いてから1時間が経過していた自称シナモンティーくんはホットからアイスティーに変わっていた。



ボタンを押して店員を呼ぶ。


鳴り響くインターホンの音。


暦は師走。


私はホットのストレートティーを追加で注文し、読書に没頭することにした。


作品名:シナモンティー 作家名:モノノケ