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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「歴女先生教えて~」 第十四話

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「先生、ということは男女の関係になっていたということでしょうね」

「加藤くん、そうね、そうだと先生も考えているの。道鏡は自分が天皇になりたいと思ったのではなく、称徳天皇が結婚したいと考えたのよね。そうすると自分が皇位を譲れば道鏡が天皇になる。そうなれば一緒に政をやって行けると考えたのね。そこで天皇は宇佐八幡宮の神託『道鏡を皇位につければ天下は太平になる』というお告げが本当かどうか確かめるために、和気清麻呂(わけのきよまろ)という臣下を派遣して、宇佐八幡宮の神託が本当かどうかの確認をしたの」

「偽の神託を誰かが道鏡のために下したのですね」

「そうね、二度目が本当なら嘘ではないとみんなに認めさせることが出来るからね。それで持ち帰ってきた神託には『人臣が天皇にとって代わることは出来ない』と書かれてあったの。これで最初の神託は偽物となり称徳天皇と道鏡の勢力は失速して、称徳天皇が崩御すると道鏡も失脚した。皇統の危機を救った和気清麻呂は忠臣の鏡とされたの。これも誰かの企みだったと思えるけど、称徳天皇は純粋に内部抗争を繰り返していた時の政権に嫌気がさして、道鏡と仏教を主体とした平和な治世を目指したとも考えられるの」

「蘇我入鹿の時のように道鏡もまた悪者にされたのですね」

「さすが高木くん!その通りよ」

「確かに天皇家に深入りはしたけど、聡明な僧侶だったことには間違いはないの。そのことを秘するために、男狂いをした天皇称徳と絶倫男の道鏡が演じられたのね」

「男で女は変わるのですね?気をつけないといけませんね」

高木のその言葉で笑いが起こっていたが、一人だけ笑えなかった加藤がそこに居た。

「高木くんは女性のために自分を変えるということは無かったの?」

「ええ?ボクがですか?」

「好きな人のために頑張ろうとか、もっと気に入ってもらうために相手の関心を買おうとか、そう言う事よ」

「先生は恋愛経験が無いと言っていましたよね?そういうことを聞くということはなにか変化があったのですね」

高木のこの返事は鋭かった。間を入れずに美穂は返した。

「そうね、恋愛に興味が出てきたのかも知れない。高木くんに聞けば何でも解るのかしら?」

「教えますよ、先生なら何でもします」

「相手が違うんじゃないの?」

この美穂の返しはさっきの自分への突っ込みに逆襲した形となった。もちろんクラス全員の失笑を買っていた。

「酷いですよ、いつも先生はなんか意味ありげなことを言いますね」

「意味が無ければ、笑って済ませばいいんじゃないのかしら?」

「敵わないからやめておきます。そろそろ終業のチャイムが鳴りそうだし」

地獄に仏とはこの事だろう。チャイムが鳴った。