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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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銀河アンドロメダスーパー大統領

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「暇だな――……なにしようかなーー……」

膨大な時間だけがある。でもやることがない。
再就職でもしようか。
どうせ何も資格がないって言われるだけだ。

暇つぶしにネットにつないで自分の名前を検索する。
もちろん、なにも記事はない。

「あ、そうだ。自分の記事でも作るか」

ネットの百科事典を編集して自分の記事を作る。
我ながら本当に暇の境地なんだなと思う。

「生まれてからすぐにモンドセレクションを受賞、
 小学生では全日本小学生優秀賞になって……。
 ははは、俺スゲー」

出来上がったページには勲章だらけの自分がいた。
こんな人間がいたら芸能人にでもなっている。

「飽きた。寝る」

そして、今日もまた同じような日々が続いた。


翌日、珍しくかかってきた電話でたたき起こされた。

「もしもし?」

『俺さんですか!? こちら週刊PASTA!です!
 あなたがベストジーニストに選ばれたのでぜひ取材に!』

「はぁ!?」

まるで心当たりがなくドッキリかと思っていたが、
現場につくやごくごく自然に表彰された。

「あの、なんで俺がベストジーニストに……?」

「あなたは人間功労賞も受賞しているでしょう。
 その姿が多くの人に勇気とジーンズを与えたんです」

「ぜんぜんわからねぇ!」

受賞理由はなんだかわからなかったがもらえるならもらっておく。
授賞式から戻ると、また次の受賞の連絡がやってくる。

「おめでとうございます! 大臣選考賞です!」
「あなたが次の大統領として選出されました!」
「今年の顔と来年の顔のダブル受賞、おめでとうございます!」

「ええええ!? なんで!?」

どれもドッキリではなかった。
受賞理由はみな同じことを話している。

「だって、あなたほかにもたくさん受賞しているでしょう?」

と。
原因がわかった、あの自分で作った記事だ。

「記事が更新されている……。すごい最新のものもこんなに早く……」

久しぶりに見てみると自分の記事が充実していた。
俺が作った前半の虚飾も、別の人が更新した事実と入り混じって
どこまでが本当なのかもう見分けがつかない。

「みんなこれを見て、すごい俺を選んでるんだな」

優秀な俺が賞を取る。
その繰り返しが雪だるま式に増えていく。

「ふふふ、俺はいったいどこまで偉くなれるんだ。楽しみだ」

俺のもとに舞い込んでくる勲章は日に日に多くなっていく。

「ジーニストを受賞した俺さんには、ぜひ紅白の総合司会を!」
「今年の顔である俺さんには、ぜひ紫綬褒章を!」
「次の大統領となった俺さんには、ぜひ国連のリーダーに!」

「ええ、いいですともいいですとも!」

気が付けば国のトップどころか、世界のリーダーに。

「モンドセレクションを100年連続で受賞している人の言葉に
 間違いなんてあるわけないわ」

「ハーバード大学教授が太鼓判を押すリーダーに間違いなんてない」

「ワールド・紫綬褒章をギネス受賞した俺さんがいつも正しい!」


「お、おお……」

与えられる称号やら勲章やら留まるところを知らない。
さすがに自分でもこれは異常だと思い始めた。

「な、なあ……さすがに俺が偉くなりすぎじゃないか?
 その……勲章を拒否するとか、ダメかな?」

「ワールド大統領、なにをおっしゃってるんですか。
 ダメに決まってます。
 みな、いろんな勲章や階級を持つあなただから与えているんです」

「デスヨネー……」

秘書に相談してみたが、もうこの流れを止めることはできない。


「おめでとうございます! あなたが地球代表へと選ばれました!!」


そうこうしているうちに、地球で最も偉大な1選に俺が選ばれた。
全世界の命をかけてでも俺の命を守らなければならない……らしい。

「や、やっぱりもういい! これ以上偉くなりたくない!
 俺は今のままが……いやむしろ普通の人でいい!」

「なにを言ってるんですか! 地球大統領!」
「アッラーの再臨と言われているんですよ!」
「どんなに偉くなっても謙虚なんて……さすがだ!」

俺は銀河英雄勲章を受章した。
本気の訴えも、ただの謙遜だと思われたらしい。

「はぁ……いったいどうすれば、俺は落ち着けるんだ……」

食事の席で落ち込んでいると、窓の外できらりと何かが光った。

「あぶない!!」


ピシュンッ!!


窓ガラスを突き破ってライフルの弾丸が顔の数センチ横をすり抜けた。

「うわわわわ!? なに!? 暗殺?!」

「銀河英雄提督大統領。いまやあなたは国を、地球を、
 いや宇宙の中心にいる存在です。御身になにかあったら……」

「俺何もしてないんだけど!」
「いるだけでいいのです」

さんざん祭り上げられて暗殺されるなんて絶対嫌だ。
追い込まれた俺の頭があるアイデアを思いついた。

「ちょっと出かけてくる!」

誰も護衛をつけずに怪しい薬屋に入る。

「ひひひ……いらっしゃい。なにが欲しいんですか?」

「仮死薬、そして蘇生薬もくれ」

「ひひひ、お客さん、死にたいんですか? 行きたいんですか?」

「どっちもだ」

薬を誰にも気づかれずに買う。
王国に戻ると薬を隠しながら秘書に尋ねた。

「なあ、俺がもし死んだらどうなる?」

「手厚く埋葬いたします。そして、100階級特進しますね」

「そうか」

やっぱりだ。死んだら最後に階級は上がるものの、
死んだ人がそれ以上勲章を与えられることはない。

一度仮死薬で死ねば、もう勲章が増え続けることもない。

試す価値はありそうだ。

「なあ、もし俺が死んでも土には埋葬しないでくれ。
 火葬もダメだ、鳥葬もダメ、わかったか?」

「かしこまりました」

俺は誰もいなくなったのを確認して、仮死薬を服用した。

 ・
 ・
 ・

時間が経過して蘇生薬が溶けだし、目が覚める。

「ふぅ、ああ~~。ずいぶん死んでいたな。体が異常に軽い」

周りは密室で囲まれていて、ツボが置かれている。
あれだけ念押ししたかいあって、棺桶に閉じ込められるオチはない。

「よし! これからは等身大の生活だ!」

部屋を出て、最初の家に帰るとやっと安心した。

「これからは顔を作り変えて、普通の人ととして過ごそう。
 気持ちも体も軽いな、楽しみだ」

これから第二の人生がはじまるんだ。楽しみでならない。
でも、その前に結局自分がどれだけ偉くなったのか気になる。

テレビをつけると、ちょうど俺の葬式が行われていた。

『俺さんは1000階級特進して、パラレルワールド大統領になりました』

もう笑った。
パラレルワールドを含めて一番偉いそうだ。




『なお、生前のご意向から遺体は火葬されずに
 内臓を取り出してツボに収め、ミイラとして保管されました』


その瞬間、笑顔が引きつった。