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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ゴブリンスレイヤーの下剋上

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冒険者の村から徒歩1分。
危なくなったらすぐに村に引き返せる位置に狩場はある。

「ふぅ、今日のゴブリン狩りはこれくらいにしておこう」

モンスターを倒すと村に戻って報酬を受け取る。
報酬の受付カウンターのおっさんは不思議そうに尋ねた。

「なぁ、兄さんはどうして毎日毎日ザコばかり倒してるんだ?
 ほかの冒険者はとっくに先へ進んで、
 もっと強いモンスターを倒しているじゃないか」

「ああ、知っているよ」

「だったら……」

「ここでちまちまレベルを上げる喜びだってあるのさ」

冒険者は去っていた。

次の日も、その次の日も、その次も……。
冒険者は毎日欠かさずザコモンスターであるゴブリンを倒し続けた。

「うんうん。だんだんコツがわかってきたぞ。
 ゴブリンはこう動くと、こうなるのか」

倒し続けていくうちに、ゴブリンの生態に詳しくなった。
どんどん倒すスピードも効率も確実性も上がっていく。

気が付けば「ゴブリンスレイヤー」という
名誉だか不名誉なのかわからないあだ名までできた。

ゴブリン界にも冒険者の名前が轟いだころ
村にひとりの女がやってきた。

「あの、あなたが有名な冒険者さんですか?」

「ええ、どうかしましたか?」

「実は倒してほしいモンスターがいるんです」

「任せてください。ゴブリン倒し続けてはや10年。
 どんなタイプのゴブリンだろうが、倒してみせますよ」

女から地図を受け取った冒険者は、
ありとあらゆるゴブリンに対策できるよう装備を整えて向かった。

しかし、目的地に待っていたのはゴブリンじゃなかった。

「な……ドラゴンじゃないか!!」

目的地で待っていたのはゴブリンよりもはるかに強いドラゴン。
ゴブリンはもとより冒険者も捕食するほどの凶暴な生物。

「どうしよう……話がちがうといって帰るか……。
 いや、でも今回の報酬はかなりの金額だからな……」

命と報酬を天秤にかけて悩んだ末の結論は、

「あれだけゴブリン倒したんだからドラゴンもできる!!」

冒険者はドラゴンに向かっていった。
ドラゴンが炎をはくと、あまりの暑さに冒険者はUターン。

「あち! あちち! ってこんなの勝てるかぁ!!」

冒険者はドラゴンの前から去っていった。
けれど、村には戻らなかった。

依頼から数日して、依頼した村の人が様子を見に来た。
冒険者は一心不乱にゴブリンを狩っていた。

「あの、なにしてるんですか」

「見て分からないか。ゴブリンを倒して、えいっ! るんだよ」

「倒すのはゴブリンじゃなくて、ドラゴンでしょう?」

「知ってるよ。だからこうして倒してるんじゃないか」

ゴブリンしか倒してこなかったゆとり冒険者に、
ドラゴンという高い壁がぶつかってついに気でも触れたのか。

村の人はそれ以上冒険者を問い詰めることもなく去っていった。
村に戻るといの一番に報告した。

「完全に廃人になっていました」



村では冒険者のことなど期待していなかったが、
数日後に冒険者が戻って来た。

「やったぞ、ついにドラゴンを倒した」

「「「 そんなばかな!? 」」」

村の人たちは目を丸くした。
ゴブリン倒しているだけの男がどうしてドラゴン倒せるのか。

(もしかしたら、ウソをついているかもしれない……)

半信半疑の村人たちは、冒険者とともに目的地へやってきた。

「ほ、本当だ! 本当にドラゴンが死んでる!」

冒険者はウソなどついていなかった。
ドラゴンは完全に息絶えていた。
けれど、どこにも傷一つ見当たらない。

「いったいどうやって倒したんだ!?」

「ここいら一帯のゴブリンを根絶やしにしたんだ。
 ドラゴンが捕食するのはゴブリンだからな」

ドラゴンはげっそりとやせ細って餓死していた。
ゴブリンスレイヤーならではの作戦に村人は感心した。

冒険者はスキップで依頼者の女のもとへやってきた。

「ご依頼通り、ドラゴンを討伐しましたよ。
 村の人たちが証人になってくれています。
 さあ報酬をくださいな」

女は心底嬉しそうに答えた。

「ああ、本当にありがとうございます!
 これであのドラゴンの脅威から私のゴブリンの住処が守れます!
 報酬は、目的地の近くにいるゴブリン長老から受け取ってください」