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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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趣味の卒業式でも治らない

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「卒業証書、私はこのたびかねてよりの趣味だったゲームを卒業し
 これからは毎日就職活動にまい進していきます」

第32回 趣味卒業証書授与式。

ここで卒業賞を受け取ったが最後、
その趣味を再び行うことは許されない。

ここは過去の自分との決別の場でもある。

「よし! これで新しいスタ―トだ!」

卒業式を終えた翌日から就職活動をはじめた。
しかし、なかなか就職先は決まらない。

「ふぅん、君の趣味は……読書ぉ?
 なんだかとってつけたような趣味だねぇ」

「あ、いやそれは……」

当たり前だ。俺の本当の趣味はゲーム。
向かってくる敵をばったばったとなぎ倒すのが大好きです。

なんて言ったら心証悪くなるに決まってる。

「君みたいなのはいっぱいいるから、不採用ね」



面接が終わると、太陽に向かって吠えた。

「ちくしょおおお! あのクソ面接官ーー!!!」

苛立ちを銀河系に向けてはなってもちっとも気分は晴れない。
何億光年も先にあるからか。

「あああ、くそっ、ゲームがやりたい、ゲームがやりたい……!!」

このイライラをすっきり解消してくれる最高のツール。
それがわかっているが卒業した以上後戻りできない。
卒業したのにまたやってしまうと警察沙汰だ。


それでも体がゲームを渇望する。

予測不能に動く相手プレイヤーを倒す爽快感。
相手をやっつける征服感。

「ダメだ……ダメだダメだ……俺は卒業したんだ……」

何度も何度も自分に言い聞かせた。
なにせ、就職活動するようになったのもゲームやりすぎて
仕事をしなくなって首になってしまったのが原因。

そう、俺はゲーム卒業したんだ。




「毎度、ありがとうございましたーー」


店を出ると、気が付けば手元にはVRゲーム機を持っていた。

「あああ! しまった! つい買ってしまったぁ!!」

最初はちょっとのぞくつもりで店内に入った。
もちろん、やるつもりはない。卒業したんだ。

「おお、最近のゲームはこんななのか」

つい手に取ってしまう。
このゲームで広がる冒険の世界を想像しては夢が膨らむ。

「やらないけど……買うだけならセーフだろ……」

会計を済ませてVRゲームが今手にあるというわけだ。
気分はクリスマスのサンタを待つ子供。
気持ちがうきうきはずむようだ。

「これは趣味じゃない! 治療……そう、治療!
 就活疲れでストレスが溜まっているからな!
 ゲームで発散しないと体に悪い! 治療なんだ!!」

楽しむつもりなんてない。治療だから。
趣味じゃないので起動してちょっとやれば終わる。

ちょっとだけ……。



「警察だ!! そこを動くな! 卒業犯罪者!!」


電源ボタンを入れるそのタイミングで警察が入って来た。

「違うんです! これは治療! 趣味じゃないんです!
 持て余したストレスのはけ口がなくて限界だったんです!」

「なにふざけたことを言ってるんだ!
 ストレスを別の場所で発散するなんてクズのすることだ!!
 やってることは弱い者いじめと同じだ!」

警察官の正義の言葉に俺は目が覚めた。


「ああ……そうだ……! そうだった!
 俺はゲームにしか居場所を見いだせなくなった自分と決別するため
 趣味卒業式に参加したんだった……!」

俺は警察官に頭を下げた。

「ありがとうございます! 目が覚めました!
 誰かを不幸にしたりいじめたり倒したりするのではなく、
 もっと健全な方法で世界と関わっていきます!」

「おお、わかった。それじゃ逮捕な」


ガチャン。
冷たい手錠があっさりかけられた。

「え!? これいい話的な感じで俺解放されるんじゃないの!?
 完全に途中までそういうムードだったよね!?」




「女房とケンカしていらいらしてるんだ。
 お前みたいな犯罪者予備軍でストレス発散しないと
 こっちもやってられないんだよ!!」