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童話大学に４人の女がやってきた。

「赤ずきん学科に、人魚姫学科、シンデレラ学科に白雪姫……。
　いろいろなコースがあるみたいね」

「私、シンデレラ学科にしよっと。
　やっぱり女の子ならだれでもプリンセスにあこがれるじゃない」

私はシンデレラ学科の内容を見てみる。
掃除洗濯など家事系の授業が多く大変そうだ。

「わたしは白雪姫学科に決めた！
　王子様のキスで目覚めるなんて最高！」

「いやそんな授業はないような……」

「それでもいいの！　白雪姫よりは楽しそうだし！」
「ちょっとそれどういう意味？」

白雪姫学科を見てみると、
自分磨きをして王子様の到着を待つカリキュラムが多い。

「私はどうしようかな……」

「うふふ～、私は～人魚姫かな～」

一番おっとりしている女は人魚姫学科を選んだ。
残っているのは赤ずきん学科だけ。

「なんで人魚姫？　一番なにするかわからなくない？」

「え～でも、お歌うたうの楽しそう～」

人魚姫のカリキュラムを見てみると、
歌を歌ったりしながら男性をまつ自由気ままな女性像の育成……とある。
この中で一番ダメそうな気がする。

「私は赤ずきんにしよ。お姫様ってガラでもないし」

４人は別れてそれぞれの学科の棟へと向かった。

童話大学では通常の授業以上に人間性の成長を重視している。
赤ずきん学科を選んだ私は、強い女性となる授業をこなした。

「いいですか！　今や男女平等……いえ、女性がリードする世界です！
　オオカミのような男を蹴散らして、なりあがりましょう！！」

「な、なんかすごいところ来ちゃった……」

「安心しなさい！　赤ずきん学科を選んだあなたは正解よ！
　ここで学べば積極的な女性になれること間違いなし！
　卒業までにはほかの学科の男をいくらでも狩れるわ！！」

軍隊の隊長にでもなれそうな教官の授業を受けて、
私はすっかり赤ずきんのような勇気ある女性へと変化した。

「グレイト！　これであなたは強い女性よ！！」

「先生、ぜんぜんモテないんですけど」

「気のせいよ！！」

先生は断言したが、気のせいなんかではなかった。
大学に進学して少し浮ついたこともできると思っていたのに。

赤ずきん精神がしみ込んだ私は、さっそく"狩り"へ行くことに。


桃太郎学科。

「いや、そんな急に来られても……仲間がいないし。
　ほら、まだ準備ができてないから、ムリだよ……ムリ……」

桃太郎学科の男は、友達といった周りの人が付いていないと
自分一人ではなにも決められない男ばかり。
これはイマイチ。ほかの学科を探そう。


浦島太郎学科。

「僕は君のような強い女性よりも、
　誰かにいじめられているようなか弱い女の子を守りたい」

「えーー……」

浦島太郎学科の男は、亀のように弱い女性を求めてしまう。
オオカミに顔色変えずに質問したりする強い赤ずきん系女性は合わない。
別の学科の男を探そう。


金太郎学科。

「ふっ、ふっ、ふっ」

「あの、なにしてるの？」

「筋肉をっ、鍛えてっ、クマにっ、勝てるようなっ、ふっ！」

金太郎学科はもはや筋肉にしか興味なかった。




「はぁ、ダメね……童話大学の男はろくなのがいないわ」

ため息をついていると、向こうから友達がやって来た。
別の学科を選んだ二人だった。
服装もすっかり童話になじんでいる。

「あれ？　赤ずきんちゃん、どうしたの？」

「モテたくて男を狩りに来たんだけど、全然だめで」

「さすが赤ずきんちゃん、すごい積極的。
　でも、私も同じこと考えていたの」

「シンデレラも？」

「ええ、王子様に声をかけられるのを待って
　これ見よがしにハンカチや靴を落として拾われるのを待ってみたけど
　やっぱり誰も声をかけてくれなかったわ」

「そうなんだ」

準備が整わないと動かない桃太郎。
自分より弱くないとダメな浦島太郎。
筋肉の金太郎。

たしかに、どれを見ても靴を拾って声をかけてくるような
紳士のイメージは感じない。

「白雪姫は？」

「わたしもダメダメ。王子様を待って、自分磨きをしてたけど……」

家事全般を練習したシンデレラに対して、
ネイルや化粧などの技術を上げた白雪姫。

「声をかけられるのを待って、大学構内で横になっていたけど
　不審者に思われるだけで殿方が声をかけることはなかったわ」

「あれ？　人魚姫は？」

「あの子、すごくモテてるって聞いたわ」

「意外よね。人魚姫学科って歌を歌うくらいでしょ？」

「私たちも歌が歌えればモテるんじゃない？」

私たち３人は人魚姫学科の人以上に歌がうまくなるよう
寝る間も惜しんで歌の練習をした。

「ラララ～♪　うん、すごくいい！　これで完璧ね！」

そのかいあって歌は大きく上達した。
大学の人通りの多い場所で歌を披露した。


「……あれ？　さっきから小一時間歌っているのに、
　ぜんぜん男から声かけられないんだけど」


のどが枯れるほど歌ったのに、ぜんぜんモテる兆しが見られない。

「もう人魚姫にモテる秘訣聞いたほうがよくない？」

「うう……そうね」

人魚姫に連絡を取ってモテる秘訣を聞くことに。

歌が歌えて、強い女性のなにが悪いのか。
歌が歌えて、家事もできる女性がなぜモテないのか。
歌が歌えて、奥ゆかしい女性はなぜモテないのか。


「みんな～おまたせ～～」

そんな様々な疑問は人魚姫がやってくるとすぐにわかった。



「結局、布の面積か！！！」

人魚姫は半裸に近い服装だった。それだけだった。