僕らの悪魔
【著】松田健太郎
○登場人物【自由】
・葉白映市(はしら・えいいち)
・晴乃(はるの)女
・里来(りく)
・照結(てむす)
○ページ数【自由】
【1】部屋の中心に円テーブルが。ガラス張りの檻が後ろにある。その檻の真中には扉が一枚。
●映市はガラス張りの檻の中。円テーブルの両端に晴乃、照結が座っている。里来が奥の扉から入ってくる。
里来 待たせた。今日の会議を始める。
●里来はテーブルに座る。照結と晴乃の間。
照結 外の様子は?
里来 変わらない。いつも通りさ。
晴乃 そろそろ私も外に出たいわ。
里来 それはこの会議の結果次第だな。
照結 しかし、里来君ばかりが外に。
里来 会議の結果だ。
晴乃 まぁ、いいわ。外に出たところで私にはどうしようもないのだし。
里来 始めるぞ。
照結 まず、今日得たものは? 共有しよう。
里来 そうだな、あれは、犬、だったか。
晴乃 犬?
里来 ああ、犬。瀬野波菜が犬を飼い始めた。
照結 あの瀬野さんが?
晴乃 たしか犬が嫌いだったはずよね。
里来 犬に慣れるためだそうだ。
照結 他には?
里来 特に何も。
晴乃 そう。
里来 ……ああ、告白された。
照結 誰に?
里来 瀬野波菜。
晴乃 犬よりもそっちのほうが重要な出来事よ!
里来 すまない、女として興味が無いんだ。
照結 なら忘れても仕方がない。
晴乃 それは酷いんじゃない?
里来 まぁ、断ったからな。解決済みだ。
晴乃 なんて断ったの? まさか
里来 「すまない、君には女としての魅力が感じられない。だから俺に告白するのはやめてくれ。これから意識することもないだろう。」と。
晴乃 最低。
照結 それは、酷いぞ。
里来 おれには関係ないね。
晴乃 だからって……。
里来 以上だ。本当にこれ以上はない。覚えていないんだ。つまらない毎日だからな。
照結 そうか。じゃあ本題に移ろう。
晴乃 そうね。
照結 次は誰が外へ出るべきか。
里来 おれだ。やはり経験が多い。
晴乃 それは貴方ばかりが外へ行くからよ。私たちも経験を積めば。
照結 やめておけ、晴乃。決定権は映市、葉白映市にある。
里来 ……行こう。
●里来、照結、晴乃は奥の檻へ近づく。
照結 穴を開ける。いいか。
晴乃 ええ。
里来 はやくしろ。
●照結、小さな穴を開ける。
映市 よこせぇぇ! 晴乃ちゃんをこっちに! よこせ! よこせ! よこせ!
里来 黙れ映市、そこからは出られない!
映市 よこせぇ、晴乃ちゃんを
●照結、穴を閉じる。映市の声は聞こえなくなる。
照結 晴乃か。
里来 なぜ、だ? なぜ俺の名を叫ばない? 映市あれほど嫌ってる俺の名をなぜ呼ばない!?
照結 おちつけ里来。
里来 黙れ、なぜだ、なぜだ。
晴乃 私……?
里来 なぜだなぜだ
晴乃 外に出られるの?
照結 おい、里来。
晴乃 やったわ、やったわ
●里来、晴乃を取り押さえる。
晴乃 えっ? ちょっと里来。
里来 照結、檻に穴を。こいつを放り込む。
晴乃 や、やめて!
里来 外にでるのは俺なんだ! それ以外は認めない!
晴乃 え? 照結? あなた!
照結 晴乃が選ばれるとはね。晴乃、僕は里来の味方なんだ。
晴乃 そんな、ならこれは何のための会議なの!?
里来 安心しろ。君は映市の初恋相手だ。きっと大事にしてくれるだろうよ。
晴乃 いやよ! やめ、て……。
●晴乃、檻の中に入れられる。
照結 また新しいやつが入ってくることになるな。
里来 それも毎回女だ。キィーキィーキィーキィー嫌になる。
照結 また映市の恋した相手、かな。
里来 だろうな。おそらく映市が強く思っているからだろう。
照結 何回目だろうか。三人会議、一旦終了だな。
里来 ああ、じゃあ外へはおれが行く。
照結 そのためのおれだ。行って来い。
●里来奥の扉からハケ。照結テーブルにつく。
【2】牢屋。
●映市が晴乃を襲いかけてる。
映市 晴乃ちゃん、会いたかったよ、晴乃。ふふ
晴乃 こないで……
映市 君は僕の理想だ、ふふ、さぁ、おいで。晴乃。
晴乃 い、や……
映市 ここからは出られないんだよ。ふっ、ふふ、晴乃ちゃん。
晴乃 や……
●晴乃、逃げる。ガタガタしながら奥へハケる。
映市 まってよ……晴乃。
●映市、晴乃を追って奥へハケる。
【3】朝。
●映市、寝起き。あくびをしながら奥からリビングへ入ってくる。
映市 おはよう、母さん。父さんも。今日も、里来だよ。葉白里来。映市は出てこない。そのほうが安心でしょ、あいつ何するかわからないから。
じゃあ、学校行ってくるよ。
●映市、ハケ。
照結 映市、君はずっと檻の中だ。君の生活は里来が続けてくれるよ。……どっちが悪なのか、ね。
完