右側にあるのが嫁ガチャ!
このままでは孤独死するのではないか。
男は迷い迷ってなぜか教会へやってきた。
「ようこそ、無神論者の身の程知らずな迷える子羊よ」
「ああ、神父様。俺はこれまでの人生を反省しています。
生まれてきたことまでさかのぼって懺悔します。
ですから、結婚させてください」
「懺悔は心の救済です。どんなに懺悔しても今は変わりません」
「そんな……」
「ですが、救う方法はあります」
神父が奥へ案内すると、ガチャガチャが2つ用意してあった。
「これは嫁ガチャ。カプセルを明ければ嫁が現れます」
「そんな便利なものが!!」
「ただし、1回だけです。開けられるのは1回きり」
教会なだけに不貞に厳しい。
一度でも嫁ができればそこはもう乗り換えられないんだろう。
「やりますか?」
「当然です!!」
2台並んでいるガチャガチャの右の台へと近づく。
台には「1回1万円」と書かれていた。
ガチャガチャとしては異例の値段設定だが、
これで嫁が手に入るとなれば良心的に見えるから不思議。お金マジック。
「よ、よし……!」
1万円を投入し、取っ手をひねる。
ガチャッ。
カプセルが1つだけ出てきた。
カプセルの底には「SR」と書かれていた。
「これは?」
「SR、スーパーレア。そこそこって意味です」
「なるほど……」
おみくじで言う小吉。
カプセルの透明な部分を見てみると、
フィギュアのように小さな女性が入っていた。
「すごい、本当に女性が入ってる。なんかジャンプして手を振ってますよ」
「ええ、嫁ですから。基本的に出した人を好きになるんですよ」
ここで開けるのも気恥ずかしいので、家に持って帰る。
その道中、冷たい外気に冷やされてふと冷静になった。
「俺、この嫁でいいのかな……」
カプセルを見てみる。
中に入っているのはそこそこの女性。
どこかの町ですれ違う確率50%のありふれた感じ。
もっと回せば、もっと美女が出てくるかもしれない。
「まだ俺はカプセルを開けてない! ノーカウント! ノーカウント!」
慌てて教会に戻った。
途中にあったコンビニで全財産を引き出して。
「おや、また来たんですかおろかな迷える子羊」
「ガチャガチャをやりに来ました!」
「そんなことだろうと思ってました。
あのガチャをやった人の大半は1回では満足しません」
2台並ぶガチャガチャへ戻って来た。
さっきのガチャガチャ台へ近寄って、台越しに中のカプセルをうかがう。
「お、おお……! ある! あるぞ、美女が!」
たくさんのカプセルに埋もれながらも美女がいる。
間違いなくこれはアタリだろう。
「俺はまだ結婚してません! だから挑戦していいですよね!」
「嫁をえり好みするその精神には反吐が出ますが、
私に止める理由はありません」
俺はふたたび1万円を突っ込んだ。
ガチャッ。
R(レア)
中には12ラウンド戦ったボクサーの顔のような人。
「くそっ……ハズレか!」
ガチャッ。
SR(スーパーレア)。
中にはどこにでもいそうな幸の薄そうな人。
「うーーん、もうひと声」
ガチャッ。
N(ニュートラル)。
中には、限りなくおじさんに近いおばさん。
「ちくしょおおおお!!」
ガチャッ。
PR。
「……PR?」
「パラレルレアですよ。すごいですね。
確率は0.01%なんです」
「えええ!?」
カプセルを覗くと中にはグラマラスでモデル顔負けの美女。
こんな子と結婚できるなんて!
「やったやったぁ!! こんな女性と結婚できるのなら
給料を全部吸い尽くされたあげくに毒殺されてもいい!!」
「おめでとうございます」
俺は髪の毛を整え、口臭をケアして、パンツをはきかえて、
緊張しながらカプセルを開けた。
中からは、大量の煙とともに美女が飛び出した。
そして、空いたカプセルには入れ違いで俺が閉じ込められた。
神父は俺の入ったカプセルを左のガチャガチャ、
「婿ガチャ」の方へと入れた。
カプセルの底には「K(クズ)」のアルファベットをふって。
作品名:右側にあるのが嫁ガチャ! 作家名:かなりえずき