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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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有料著作権を払え、払え!

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「なに!? 子供が生まれそう!?」

妻である"佐藤あや"の担当医から電話がかかった。

病院からの知らせを聞いてパソコンを閉じた。
小説なんて書いている場合じゃない。

出かける準備を済ませて玄関に走った。
しかし、タイミング悪くインターホンがなる。

「ああ、もう、こんな時に誰だよ!」

ドアを開けるとスーツ姿の男が立っていた。
NHKの集金だろうか。

「どうも、佐藤さんですね?」
「あ、はい」

「あなたに著作料金が発生しています」

「ちょ、著作料金!?」

「この世界に何かを産み落とすとお金がかかるんです。
 あなたの書いている小説もしかり、です」

「創作しただけで金を取るのかよ!」

「当たり前です。あなたのうんこみたいな小説のために
 サーバー維持費、メモリ容量、管理人件費……。
 いったいどれだけの金がかかると思ってるんですか」

著作権徴収官は手元の資料をぺらぺらとめくる。

「あなたはこれまで、のべ400作の小説を著作していますね。
 であれば、その料金は……」

「それどころじゃない! こっちは子供が生まれそうなんだ!」

「こっちだって真剣ですよ! この後にも仕事あるんです!
 同僚には絶対に仕事で負けたくないし!!」

強く言えばその10倍の熱量で反論されてしまう。

「なぁ、せめて電話を一本かけさせてくれないか?」

「それくらいならいいですよ」

プルルル……。

「あ、もしもし? ええ、はい、そうです、お願いします。
 住所は○○町××番地です、はい。それじゃ」

電話が切れると徴収官はけげんな顔をする。

「どこにかけたんです? 逃げるのは許さないですよ」

「タクシー会社。子供が生まれそうだから急いでるんだ」

「ふぅん、まあいいです。では、あなたの料金を読み上げますね」

著作官は書類に書いてある俺の著作経歴をつらつらと読み上げる。
普通ならさっさと金を払って済ませたいが、あえて難癖をつけた。

「待ってくれ。今、小説といったか?」

「ええ、それがなにか?」

「小説とは具体的になんだ? 詩は含まれるのか? エッセイは?
 そこの定義があいまいだと金を払わないぞ。
 料金が盛られている可能性があるからな。ちゃんとしてくれ」

「ああ……めんどくさい人ですね……」

著作官はしかたなく書類にくどい説明文を書き加える。
"この場合の著作とは、甲がサイトに書いた文書を示すもので……(略"

「これでいいですね、それじゃあ次は……」

「おい待ってくれ。それだとわからない」

「今度は何ですか!!」

「サイトってのはどこのサイトだ? いつのサイトだ?
 ブログも含まれるのか? SNSは?
 そこをちゃんと明言してくれないと、払うものも払わない」

「はぁ……わかりましたよ……」

著作官はしぶしぶ書き加える。
今度も長たらしい文章をいくつもいくつも。

「あなた、めんどくさい作業を私に課して
 この場から逃げるつもりですか? そうはさせませんよ?」

「そんなつもりはない。
 ただ、金を払うんだからしっかりしておきたいだけだ」

俺はにやつく顔を必死にこらえた。
真実はちがう。

著作官は気付いてないが、すでにこいつ自身も著作者になっている。

書類にいくつもの文章をオリジナルで作らせている。
さっき電話した別の著作官がじきに来るだろう。
こいつから著作権料を回収するために。

そうなってしまえばこちらのもの。
もめている間にさっさと病院へ行くことができる。ジ・エンドだ。

「今度はもう文句ないですね?」

「いやいや、まだあるぞ。合作はどうなるんだ? パロディは?
 どこまでが俺のオリジナルで、どこまでが違うんだ?」

「ああ、もうわかりましたよ。書いておきます」

著作官がまた新しい文章を産みだした。
その肩越しに同じ制服の男が向かってくるのが見えた。

あれは電話で呼びつけた別の著作官だ。

「どうも、あなた、小泉さんですね?」

「な……どうしてここに著作徴収官が!?」

「あなたから著作料を徴収しに来たんです」

作戦通り。
俺は小泉と呼ばれた男の書類を見せた。

「ほら見てください! こんなにもオリジナルの文章を書いています!
 これはもう著作です! まごうことなきオリジナル作品!
 さぁ、早く著作権料を回収してください、この男から!」

すると、跡から来た著作官は首をかしげた。

「あの、なにか勘違いしているみたいですが、違いますよ。
 僕が回収しにきたのは書類の創作によるものですはないです」

「え……?」



「僕は、ちょうど小泉さんのお子さんが生まれたので、
 その著作料を回収しに来たんです。
 早く著作量を払って、妻の"佐藤あや"さんのところに急いでください」