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てるてるぼうず
てるてるぼうず
novelistID. 61157
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二十歳になる今、振り返る

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もうすぐ、二十歳になる。
振り返れば、いわゆる普通の人生だった。特に大変なこともなく、不自由もなく、人間関係にも恵まれて、人並にみに何かを頑張ったりとか、努力してみたりとか。
そして振り返った今、
自分が分からなくなった。
純粋に生きてきて、その他大勢と変わりない
生活を送ってきたはずなんだ。
なのに、何か、足りない。
自分に何かが足りない。
それは目に見えるものでは無い。
薄情だとか、異端な訳でもない。
一体なんなんだろう。

中学校三年生の頃、恋をした。
出会いは偶然。友達を通して、
メールをする仲になった子だった。
すごく可愛い、天使のような子だった。
僕は彼女の笑顔が好きだった。
そして仲良くなり、人生で初めて告白をした。
そしてあえなくフラれてしまったのだ。
昔から人一倍感傷的だった僕はとても悲しく、
とても悔しい気持ちになった。心に穴が空いたようだった。その時から高校3年生までずっと好きだった。高校も同じだったのであきらめることができなかった。実は就職して社会人になり、その夏まで片想いは続いていた。今思えばとても迷惑な片想いをしていたような気がする。

そうして僕の中で彼女の存在は、大きなものになっていた。しかしそれは、自分の人生の中で貴重な時間を費やした事に見返りを求めているからなのかもしれない。自分自身のやってきたことを肯定したいからだ。僕の中で思考が巡る。あの恋愛は自己陶酔だったのではないか。
それから諦めることは出来たが、いつまで経っても心に空いた穴は埋まることはなかった。

大人になるにつれて、自分の変化が嫌になる。不思議だ。昔は綺麗に見えた故郷の夕日が、今では子供だましのアニメを見ている時のような、売れない画家のぱっとしない絵を見ているような気分になる。自分でも分かっている。濁ったレンズ越しに見ているのだ。純粋でいたいという気持ちに反して、レンズは濁っていく。拭いても拭いても、綺麗にならない。むしろ傷ついてしまう。いっそ目を瞑りたい。とても苦しいのだ。思考を止めたい。誰か自分を理解してくれる人はいないのか。そんなことを考えながら、結局は夕日を見つめて、
「綺麗だな」なんて呟いているのだ。

この文章を書いているまさに数十分前に、
女性と電話をしていた。この女性は中高時代に
よく恋愛相談に乗ってもらっていた子だ。
この子と初めて性についての話をした。僕はとても興奮し、聞きたいことも聞いた。自分は女性経験がないので、劣等感も感じた。しかし何より辛かったのはその女性の変化だ。僕の中の彼女はいい子で、純粋で、汚れをしらなかった。もちろん美化しすぎているが、あまりに変わりすぎた。下世話な話を当たり前のように話す。嫌になった僕は話を変えた。この電話の翌日は、学生時代好きだったあの子の誕生日なのだ。よく相談に乗ったもらっていたので、話を切り出してみた。だが、反応は予想もしていないものだった。あまりに軽く、あまりに理解されていなかった。とてつもない虚無感に襲われた。自分の今までの人生、特にその中でも大きい恋愛を否定されてしまったように感じた。

足りないものは何なのか。恋愛からきた亀裂によるだろう。
いや、もしかするともっと別のモノなのか。
傍から見るととても小さくて、本当はとても大きいような、コレは一体何なのだろう。
自分は純粋でいたい、なのにその気持ちと相反するように膨らんでいく邪念は何なんだろう。
好きだった彼女や周りの友達と僕の違いはなんなのだろう。この心の穴を埋めてくれる人はいないのか。
どんなに考えても、分からない。

ただ言えることは、僕が
普通ではなくなってしまったということなのだろう。
普通に大人になって、普通に彼女を作って、普通にセックスをして、普通に就職して、普通に家庭を築いて、
普通に失敗したりして。上げればきりがない世の中の「普通」と自分を比較してしまっているのだろう。
いつの間にかねじ曲がってしまったのだろう。
どうすればよかったのか。
あの時ふられてすぐに諦めればよかったのか。
適当に彼女をつくって初体験を済ませていればよかったのか?僕には分からない。
ただ、きっと、もう普通には戻れないのではないかと思う。穴は空いたまま戻らない。手で押さえながら進むしかない。レールはほかの人よりも細く、脆い。それでも進むしかない。すべて受け入れるしかない。そんなもんだ。

今日も進もう。歩いてでも走ってでも、
休憩しながらでもいい。
後ろを振り向くのもたまにはいい。
応援してくれる人も少しいればいい。
きっとみんな一緒だ。
みんな抱えている。足りないものもある。
それでいい。

深呼吸しよう。
明日はどんな天気になるだろうか。