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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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あ~~イライラするぅ!

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「さて、今日も仕事するか」

今日も1日何事もなかった。
警察になってもう長いが
今まで一度も事件に巻き込まれたことはない。

この町はきっと俺が目を光らせているから平和なんだろう。

パソコンを立ち上げて今日の報告書を作ろう。


............読み込み中


「……またか」

バーチャルパソコンが表示されるまで時間がかかる。

デジタル化によってすべて物質が省略されて、
バーチャルになったのはいいが、いつも読み込みが発生する。

「パソコンが構築されるまで、テレビでも見るか」

時間つぶしにバーチャルリモコンを手に取った。



............読み込み中



「チッ、こっちもか」

バーチャルテレビでも読み込み中の表示。
ホログラフで何もかもできているから、時間がかかる。

「ゲームでもするか」

バーチャルスマホを立ち上げると、また。


............読み込み中


「うおおおお!! いい加減にしろぉぉぉ!!」

もう我慢できない。
何か物にあたろうかと扉を開けようとした。

が、バーチャル扉にはまたあの表示。


............読み込み中

「チクショーーー!!」

なんかもう行き先のわからない怒りに体が焼かれるよう。
最近ではゴミ箱のふたを開けるのにも読み込みが入る。

10秒20秒待たされるだけでも日常の動作なだけに超不愉快。

「こうなったら……苦情いってやる!!」

警察官の職権を全力で乱用して、本元を調べ上げることに。
どうせ事件はないんだ。時間は腐るほどある。


「あった!!」

バーチャルパソコンが立ち上がるよりも早く、
アナログで調べた電話帳に連絡先が書いてあった。

電話をつなぐと、すぐにつながった。

「もしもし!?」

『ただいま、電話をおつなぎしています。
 読み込みが終わるまでそのままでお待ちください』


「ここでもかぁぁぁ!!!」

もう許さん!!

電話を切って現場に直行。
このフットワークの軽さは警察学校仕込みだ。

本元である"バーチャルホログラフィ株式会社"にやってきた。

「失礼ですがご予約はなされていますか?」

「いえ。読み込みで待たされることに苦情を言いに来ました」

「では、今日1日のすべての来客が終わるまで
 そこでお座りになってお待ちください」

俺は銃を鼻先に突きつけた。

「俺は待たせられることに文句をつけにきたゆったよね?
 それをさらに待たせるってどういうつもり? ねえ?」

「しゃ、社長は最上階でございます!」

こんなことなら制服着てくればよかった。
こっちが警察だとわかったら、すぐに通してくれるだろう。

「ここか……」

社長室につくと、ドアを開けようとした。



............読み込み中

「ふざけんなぁ!!」

思い切りけ破って中に入る。
そこには目を点にした社長が待っていた。

ただし、ホログラフで。

「き、君は……!?」

「社長!! あんたのせいでこっちはストレスで死にそうだ!!」

「なんのことかね!?」

「あんたが開発したバーチャルが遅すぎるんだよ!
 いつでも読み込み中になりがやって! ふざけんな!!」

「そ、それはわざとやってるんだよ!」

「はあああああああ!?」

ますます許せなくなった。
すでにホログラフ社長を何度か打ち抜いている。

「なんでわざと読み込み中にしてんだよ!! 馬鹿か!!」

「そ、それは……その……」

「言わないと逮捕する」
「むちゃくちゃだぁ!」

社長は観念したとばかりにそっと社長室の机を指さす。

「引き出しだ。引き出しにその理由が書かれたものがある。
 ただし、誰にも見られない場所で確認してくれ。
 トップシークレットだからな。それと……」

............読み込み中

「おいいいい!!」

ホログラフ社長は止まってしまった。
まあ、理由のわかる書類は手に入れた。これで謎が解明できる。

理由さえわかれば、いらいらしなくて済むだろう。

「……ここで確認するわけにもいかないか。家に帰ろう」

誰か来るかもしれない社長室を後にした。
家でならだれにも見られることはない。安全だ。

ひと仕事やりきった感で胸がいっぱいだ。
なにかお祝いにとコンビニへ寄ったときだった。


「全員動くな!! 動くとハチの巣になるぞ!!」

まさかのコンビニ強盗と鉢合わせした。
ここは平和な町だったはずなのに。

警察ではあれど初めて直面する事件に体が動かない。
まるで読み込み中にでもなったみたいだ。

「へへへ、よし、それじゃあまずはレジの金を出しな。
 そのあとは客の財布から全部金を抜いてやる。
 ほら、レジ開けろ」


............読み込み中

バーチャルレジを操作しようとすると、読み込みが入った。

「さ、さっさとしやがれ!!」

「ムチャ言わんでください!」

「ええい!! だったら財布だ!! お前ら全員財布をあけろ!」

犯人は客全員に銃口をつきつけた。
全員いっせいに財布を開いたために、回線が重くなる。


............読み込み中


「あああ! ちくしょう! いい加減に……しろおお!!」

犯人は怒りのあまり引き金にかけた指を引いた。


............読み込み中

バーチャル銃は読み込みが発生した。
犯人はもう逃げようとしたが自動ドアも読み込み中。

そのとき、俺の持っていた書類がひらりと落ちた。



>犯罪防止のため、読み込み中を作っています。


すべてがモタつくこの町で、犯罪はもう行えなくなっていた。