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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ゾンビだって病気になるもん!

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「今日はどうされましたか?」

「体調がすぐれないんです……。
 朝起きても頭が痛いし、血肉を食べる食欲ないんです……」

「そうですねぇ……」

「脳みそなんて重くて食べれないし、
 内臓なんて見たら吐き気がします……。
 ゾンビなのにどこか悪いんでしょうか……」

「とりあえず、風邪の薬出しておきますね」

ゾンビ医師は薬を出して患者を見送った。
最近、この手のゾンビがよく訪れる。

「いったい、何が起きてるのかしら……」

世界にゾンビウイルスが蔓延して数年。
人間という人種はすべて食らい尽くされて、全人類はゾンビ化した。

ゾンビでも風邪はひくし、ストレスで体調も崩す。

とはいえ、最近の患者はどう考えても以上。
なにか新しいウイルスが蔓延しているとしか思えない。

「ちょっと調査してみよう」

ゾンビ医者のプライドにかけて不調の原因を究明することに。
わかったのは自分の心配が現実のものとなったこと。

「これは……ゾンフルエンザ!?」

新種のウイルスが広がっていた。
その感染力たるやほかの病気の比にならない。

まして、内臓まるだしで脳みそ丸出し。
血は流しっぱなしのゾンビに抵抗力なんてない。

どうぞ感染させてくださいと招き入れているような状況だ。

「このウイルス……初期症状こそ風邪に似ているけど、
 最高潮になったらとんでもないことになるわ!!
 早くワクチンを作らなくっちゃ!」

ゾンフルエンザが体温を上昇させれば、ゾンビなんてひとたまりもない。
命をか細い糸でつなぎとめているような状況なので、
体温がわずかに上がってゾンビ化に影響すれば、すなわち即死。

ゾンビ医師は持てる知識のすべてを動員し、
ゾンフルエンザウイルスに対抗するワクチン開発を行った。

「できた!! これで撃退できる!!」

ゾンフルエンザに対抗するワクチン『T-ワクチン』。
感染した人はもちろん、感染予防にも使える万能薬。

「よし、後はこれを使って噛めばいいのね!」

T-ワクチンは注射式だが、単体では役に立たない。
ワクチンを注射した人に噛まれて初めて抗体をなす。

さっそく、自分に注射して患者を待つことに。

「これでゾンフル問題は解決よ!」

 ・
 ・
 ・

「……あれ? 誰も来ない?」

ゾンフルエンザのことは世界的にも発表しているし
ワクチンへの感染方法もすでに世界に拡散している。

なのに、ゾンビ病棟にはゾンビ1人来やしない。

「待っているだけじゃダメね。自分からいかなくちゃ!」

ゾンビ医師は町に出てゾンビにかみつくことに。
ゾンフルエンザの感染拡大を防ぐ慈善事業なのだから。

でも……。

「ムリムリムリ!! ゾンビに噛まれるとかムリ!!」
「ゾンビとか超汚いし!! こないでよ!!」
「マジありえないんですけど!! ゾンビに噛まれるとか!!」

めっちゃ拒否された。
ゾンビなのに。

「え……でも、みなさん噛みついたり、噛みつかれたりしましたよね」

「それは、最初だけでしょ!?
 それに人間に噛みつくのはいいけど、ゾンビになんていや!」

「むちゃくちゃな……」

「生理的に無理だもん! つか、ゾンビの男を見てみてよ!」

周りを見渡してみると、ゾンビ男はみんな汚れている。
自分たちもそう変わらないとはいえ、あれに噛まれるのは抵抗ある。

「とにかく、ゾンビじゃない。かつ、イケメンじゃないと嫌!!」

「えええ……」

気持ちはわからないでもないので、それ以上は食い下がれなかった。
脳みそ丸出しで、口から血を垂れ流し放題のゾンビ男に
おいそれと首筋噛まれるのは……。

「……たしかに……ってどうすればいいのよぉぉ!!」

元はイケメンだった俳優もゾンビ化すればたちまち魅力ダウン。
誰もが振り返る美女もゾンビ化すれば周りと一緒。

そうこうしているうちに、ゾンフルエンザは蔓延していく。

「そ、そうだ!! あれになら噛まれたいはず!!」

ゾンビ医師はすぐに呼び寄せた。





数日後、ゾンビ病棟の前には長蛇の列ができていた。
その誰もがワクチン接種のため、噛まれに来ている。

「大盛況ですね、先生」

看護助手ゾンビは嬉しそうにカルテを渡した。

「あんなに噛まれるのが嫌だといっていたのに、
 今じゃ噛まれるために並んでいるんですもん」

「それだけに、ここへ呼ぶのはすごく苦労したわ……」

「でも、いったい誰が噛んでワクチン感染させてるんです?
 人間は絶滅したし、ゾンビはお互いを噛まないですし」

看護助手が聞いたとき、診察室のカーテンがシャッと開いた。





「次の方、どうぞーー」

イケメンのドラキュラは、口元の血を拭きつつ患者を呼んだ。