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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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誰か俺の代わりにプロット書いてよぉ!

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「あの、息子はまだ治らないんですか?」
「まだまだ様子を見ないといけませんね」

「いや、もう治ってますけど」

兄とともに事故に遭ったのが半年前。
自分ではすっかり治っているのに通院は続いている。

「では、また病院に来てください」

「またぁ!?」

半年前の事故で兄は死に、俺はケガをした。
そのケガをまだ治せないなんて、実はヤブ医者なんじゃないか。

俺は納得いかないまま家に帰った……。


(了)
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「ふぅ……終わった」

小説を投稿するとひと息ついた。
もともとは兄の趣味だった執筆だが、事故を機に初めて見た。

といっても、ネットで公開するWeb小説だし
内容は創作というよりも日記に近い。

毎日感じたことや体験したことをしたためている。
半分以上が通院に対するグチだけど。

「……アクセス数、4か」

およそ創造力がない俺の日記に評価はつかない。
投稿サイトで書いている以上、ポイントは気になってしまう。

「くそ……。でも、ファンタジーなんて書けないしなぁ」

なんとか人気を取りたいものの、
病院の悪口ばかり書いているもんだから何も思いつかない。
その日はあきらめて寝た。


翌日、小説サイトの自分のページに行くと変化があった。
プロフィールが勝手に更新されている。

ハッキングやコンピュータウイルスを疑う前に
そこに書き込まれている内容にくぎづけになった。

「これ……プロットか……!?」

小説のプロットがマイページに書き込まれていた。
その面白さに、ウイルスやハッキングなどといった邪念は吹っ飛んだ。

すぐさまプロットをもとに小説を書く。

今まで日記しか書いてこなかった俺が初めて創作した。
結果は大成功で、サイト内で俺の評価は爆増した。

>本当に面白かったです!
>早く続きが読みたいです
>書籍化して文庫本でも読みたい!

「おおお! やった! やったぞ!!」

念願の人気作家の仲間入り。
調子に乗って、通院日記もまた投稿してみた。

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今日も通院。
医者からは
「まだ治らないのか」「自覚してないのか」
など、いつもと同じ問いかけ。

もう治ってるつーの。
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が、こっちは相変わらず低評価。

「ちくしょーーーーー!!」

血の涙が流れた。

プロットはその日だけでなく、毎日目が覚めると書かれていた。
それをもとに書いた小説は大人気。

まさに姿の見えない人との共同執筆。

最近は漫画でも脚本と絵を描く人は別のもあるので、
こういうやり方もあるかもしれない。

気になるのは、書いているのが誰なのか。

「うーーん、ちょっと監視してみようか」

サイトのマイページをじっと見つめて
更新されるのをまったことがある。
途中で眠ったスキに更新されていた。

「……きっとネットワークを介して
 誰か俺のファンが書き込んでるんだ! そうに違いない!」

犯人を特定できなかったことを棚上げして、
勝手にそういうことで納得した。


次の日、いつも通り病院に行った。

「治るのには時間かかりますから……」と医者。

「だから治ってるって!
 折れた腕も治って、足も今じゃ100m走れます!」

「まずは自分で自覚してもらわないと……」

今日も平行線。
いらいらしながら家に帰って、サイトを立ち上げる。
いつも通りプロットを小説に書き起こそうとした。

「あれ!? これ……まさか……兄貴……!?」

どうして今まで気が付かなかったのか。
書かれているプロットは兄の面影がある。

慌てて兄の部屋を漁ると別の小説のプロットが出てきた。

内容は、俺のマイページに書かれるプロットとは違うが
書筋や展開の仕方を見ていると、どう見ても同一人物。

「兄貴……小説書くの好きだったもんな……。
 きっと死んでも魂がネットの中に残ってたんだ」

今までプロットを書いていた人を探していた。
でも、こんなに近くにいたなんて。


その日から、俺は小説執筆者の部分に兄も書くようにした。
兄弟で書いた作品はまた人気になった。

 ・
 ・
 ・

翌日、通院すると医者が腹をくくった顔をしていた。

「やはり、ここは荒療治しかないと思います」

「何する気ですか!? ケガは治ってますよ!?」

何されるのか。こんなにも健康体なのに。

「あなたは、弟ではなく兄なんですよ。
 事故で死んだのは弟の方です。
 本当は自覚して過去を乗り越えてほしかったんですが……」

「え? それじゃ俺の病気ってケガじゃなくて……」

「解離性同一性障害。つまり……二重人格です」


その後、親に聞いたら、俺が寝た後にいきなり起き上がり
小説のプロットを書いたかと思えばまた寝る。
そんな奇妙な姿が何度も見られたらしい。