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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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動物自殺をとめろ!

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息子は学校を不登校になってしばらくたつ。
変わり映えしないニート生活。

同じ風景。
同じ食事。

昨日のリピートを今日こなしているだけの日々だった。
でも、それを誰かに当たり散らすことはない。
誰よりも優しく、そしてうちに秘める性格だった。

なんなら、こんな自分を養ってくれる両親に感謝していた。

「ああ、そうだ。両親にサプライズでごちそうを作ろう。
 昔、家族で焼肉へいったっけ。すごく喜んでいたなぁ」

息子は両親の幸せそうな笑顔を思い出して、
贅沢なお肉とそれを焼く網などのセットを買いに出かけた。

そんな息子の両親の仕事は農家。

「やれやれ、これで今年は5頭目か……」

「またですか、お父さん」

「いったい何が起きてるんだ」

家畜を育てている両親は頭を悩ませていた。
なにせ、家畜が原因不明の連続死ともなれば
家畜農家としては大損害。

「まさか宇宙人とか……チュパカブ……なんだっけ」

「お父さん、考えすぎですよ。
 でも、このままじゃうちは赤字です」

家に戻った両親はテレビをつけて、目を疑った。
今まさに頭を悩ませていたことがニュースになっていた。


『現在、全国各地で動物の自殺が問題となっております。
 犬、猫などのペットをはじめ、家畜などが
 息を止めたりなどして自殺する事件が相次いでいます』

「こ、これだよ! まさにこれだ!」

「怖いわ、お父さん。
 変なウイルスでも流行っているのかしら」

『専門家の分析によりますと動物自殺の原因は、
 "変わらない環境"と"性格"にあります』

父親はテレビの音量を上げる。

『自殺した動物はいずれも閉鎖的な環境で
 長時間にわたって変化のない日々を過ごしていました。
 それがストレスになり、自殺へと追いやるのです』

「た、たしかに、うちは放牧方式ではなく
 閉鎖的な場所で家畜を管理してたな……」

『さらに、自意識が強くない動物ほど自殺する傾向があります。
 つまり内向的な動物ほど自殺しがちです』

「お父さん、今朝死んだはな子もおとなしかったわ!」

「こ、これはまずいぞ……! なんとかしなくては!」

焦った夫婦はすぐに行動をはじめた。
少しでも遅れれば、明日にはまた何頭自殺するかわからない。


「家畜を自由にするんだ!」

まずは、これまで倉庫にも近い場所に閉じ込めていた家畜を
広い場所へ放牧することにした。

「お父さん、これで変わらない環境は改善できますね」

「ああ、毎日同じ場所で過ごしていると、自殺するからな」

そして、家畜たちの様子を見ておとなしい動物を見つけると
群れに加われるようにサポートした。

孤立気味だった動物は仲間に加わって、性格も変わったように見えた。

「よし、これで自殺は防げたな」

「そうですねお父さん。内気な子は自殺しやすいけど
 こうして周りに影響されれば少しは性格も変わるでしょう」

「変わり映えしない環境。内向的な性格。
 うん、これでどちらもクリアだな!」

夫婦は動物自殺の問題を片付けて、ほっと一息ついた。
そして、すぐに気が付いた。

「変わり映えしない環境……内向的な性格……!?」

条件に該当する動物がまだ1匹いることに。
夫婦は家で養っていた息子を思い出す。

「たたたた、大変だ!!」



夫婦は慌てて家に帰る!
脳裏には最悪なイメージばかりが浮かぶ。

家に戻ると、今まさにその光景が待っていた。

「ああああ!! は、早まるな!!!」


息子は今まさに七輪で自殺をしようとしていた。
横においしそうな肉をたくさん用意して。