あなたの作品問題があります!
「最近、検閲が厳しくてね。作品書き直してもらえない?」
「まぁ、絶海の孤島に集められた若者たちが
お互いを殺し合うなんてそれこそ危ないテーマだとは思います。
でも、僕はこの作品を通して伝えたいんです!
生きる意味を! 本当の友情を!」
「まずその殺し合いという部分がね……」
「やっぱりですか……」
これは僕もうすうす問題になるだろうと思ってはいた。
避けたい部分ではあったが、生々しい描写を削って
殺し合いという味を薄めるしかないだろう。
「殺し合いはやめよう」
「は!?」
「絶海の孤島で、友達作りに変更しよう!」
「えええええええ!? なんですかその修学旅行!?
それじゃ話が変わっちゃいますよ!?」
「でも、親御さんたちがうるさくてね……。
"こんなの子供に見せられない"って」
「いやでも、それじゃ登場人物たちどうするんです?
わざわざ無人島にいってパーティするんですか?」
「そこはあなたの文才でなんとかしてくださいよ」
「え、ええ……?」
編集にいいように丸め込まれた。
まあ、殺し合いで「生きる意味」を伝えられなくなっても
「本当の友情」という部分が残ればいいか。
「でね、男女が無人島という部分も変えてほしいんだ」
「はい!?」
「親御さんからクレームが来てね。
男女が密室で寝食をともにするなんて卑猥だって」
「無人島って密室に含まれるんですか!?」
「とにかく、そこも変えてよ」
「ヒロインとかどうするんですか!?
主人公の男の子と一緒にずっと行動してますよ!?」
「それじゃ登場人物の性別はなくそう」
ということで、性別がなくなった。
性別がないので異性を見てどきどきすることも、
友達と争うことの葛藤もなくなった。
「も、もうこれでいいですよね……」
「いや、実はまだ1つあるんだ」
「もうどこにも問題ないでしょ!?」
「食事のシーンがあるじゃないか? そこが問題なんだ」
「えええ!?」
「無人島だから食事も雑だろう? 子供がまねしたら危ないって。
食中毒になるかもしれないし、のどに詰まらせるかもしれない」
「なっ……」
「変えられないかな?」
「わかりました! わかりましたよぉ!!」
半分涙声になりながら、俺は自分の小説に大幅な工事を加えた。
かくして、『フレンド・ロワイヤル』は出版された。
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時は、20xx年。
「性別」という概念がなくなった人間の間には
ある共通の問題が浮上した。
「友達がいない」
そこで人類は友達づくりのために
絶海の無人島へと足を運び、友達を作らないと出れなくした。
重ねるが、彼らに性別などといったものはない。
一緒に居ても問題はない。ぜんぜん興奮とかしない。
「よし、必ず友達を作って無人島を出るぞ!
……しかし、おなかが減ったなぁ」
ちょうどいいところにガスコンロが置いてあった。
主人公はしっかり火を通した肉と野菜で、
健康的でバランスのいい食事をよく噛んで食べた。
もちろん、排せつなども不要だ。
そのような下品な機構はない。
他人と争うこともない。
彼らはケンカや悪口といった下品なことはしない。
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出版された本は、クレーム親のもとにも送られた。
本を読んだ子供は親に聞いた。
「ねぇ、ママ。この本に出てくる人ってホントに人間?」
作品名:あなたの作品問題があります! 作家名:かなりえずき