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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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賭け大富豪は3回戦!

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テーブルにつくと、対戦相手たちはニコニコ笑っている。

「今から大富豪をするわけだが、ただやるんじゃつまらない。
 ワシらは老後のために、スリルや刺激を求めておる」

「金をかけるのか? あいにくだけど、手持ちはない」

「かけるのは金じゃない。人生じゃ」

テーブルに映画のフィルムが置かれた。
よく見ると、自分の人生がしっかり刻まれている。

「大富豪3回勝負じゃ、よいな?
 お前さんが勝てば他の人間が手に入れた幸せを
 ともすれば独り占めできるというわけだ」

「仕事もなく、公園で寝起きしてたころから脱却できるぞ?」

「わかった、やるに決まってる」

俺は対戦相手の老人たちにたんかをきった。
カードは平等に配られる。悪い手札じゃない。

「よし、勝負だ!!」



1回戦終了。

「ほっほっほ、口ほどにもないのぅ」
「最近のわかいもんは大富豪もできないのか」

俺は思い切り負けてしまった。
仕方なく、負けた分の自分の人生を渡した。

仕事をリストラされて、絶望していた時の過去なので
失って惜しいほどの人生ではない。
むしろいい引き取り手があってよかった。

受け取った、1位の大富豪老人はなおも要求する。

「ほれ、まだあるじゃろ」

「まだ? もうこれで最後だよ」

「わしは大富豪、お前さんが大貧民。
 ルール通り一番良かった時の人生を渡せ」

「う、うそ!?」

大富豪のルールをすっかり忘れていた。
大貧民(最下位)は大富豪(トップ)へ渡す必要がある。

「で、でも後で勝って取り返せば……」

「勝てるかのぅ?」

仕方なく、人生で一番よかった時のフィルムを渡した。
嬉しさにカードぶちまけてるよくわかんない映像。

「では、2回戦と行こうか。さぁ、人生をBETするのじゃ」

賭け人生はさっきより抑えた。
自分に流れが来るまでは小出しに行く作戦。

「ほほ、つまらんのぅ。
 賭けをするのはスリルを味わうためなのに
 安全策に逃げれば途端に冷めてしまうの」

「ほ、ほっとけ!」

小出しにしていれば、3回戦後も人生は残る。
人生の最高潮を奪われたとしても、余生を楽しむ余裕はある。

そして、はじまった2回戦。






「うあああ!! また負けたぁあああ!!!」

「ほっほっほ。お前さん、弱すぎるのぅ」

まさかの2連続で大貧民。
今度は俺の人生の最高に幸せな瞬間が奪われた。
茶色のカバンいっぱいに何かを詰めている。

「さてさて、どうする、若造? まだ続けるか?」

「ひょひょ。若い衆をあおるんじゃないよ。
 どうせもう勝負はしないさ」

「まあ、わしらプロ大富豪プレイヤーに
 若いど素人がほいほい勝てるわけないわな」

「いつも通り、残りの人生惜しさに投げ出すさ。
 ここまでは楽しめたからよしとしよう」



「3回戦、俺はすべての人生をBETする!!」


老人たちの入れ歯が落ちた。

「ほう? 威勢だけはいいようじゃの」
「どうせ自暴自棄になってるだけじゃ」

「違うね。俺は未来を見通す力があるんだ。
 俺は自分の勝利を確信している」

「ほっほっほ! 見通す力!? ばかばかしい!」
「これだから若者をカモにするのは止められない!」

「で、あんたら3回戦やるんだよな」

「「 もちろん 」」

老人たちは俺をつぶそうと最高の賭け人生を出した。
生産しきれない人生を追わせて、
俺どころか連帯保証人の人生もむしり取るつもりだろう。

もちろん、イカサマなんてできないし
まして何か勝算があるわけでも、突飛な作戦があるわけでもない。



そして、運命の3回戦。


「な、なんじゃとぉぉ!?」

ついに俺は勝利した。
老人たちの賭けた人生と、一番いい人生を受け取る。

「言っただろ。俺は未来を見通す力がある」

「そんじゃばかにゃ……ふがふが」

3回戦での大逆転。
これまでの人生ぶんを取り返し、さらに上乗せもされた。

「っしゃーー! 今後の人生も幸せ確定だ!!」

俺はカードをぶちまけ、
茶色のカバンに奪った人生フィルムをパンパンに詰めた。
最高に幸せで、人生で最高潮の瞬間だった。


「ま、まさかお前さん……。
 渡した人生の最高潮がこの瞬間だと気付いて……!?」

「ああ、人生の最高潮が敗北なわけがない。
 だから勝利を確信したのさ」

俺はさっそうとカバンを持って立ち上がった。
老人たちから奪った人生で、きっと今後も幸せな日々になる。





「……でも、人生の最高潮が今日だとすると
 今後の人生では今日以上のことは起きない?」

「…………あっ」

勝負には勝ったはずなのに、なぜか涙が出た。切ない。