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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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俺の仕事は金融業……の打ち切り役。
融資できなくなった人に伝えるのが仕事。

「では、融資を打ち切らせてもらいます」

「……うぅぅぅ……わかりました……」

融資の打ち切りなんて聞けば泣いてすがるものだが、
俺のたぐいまれな交渉術でもめることは少ない。

コツはたった1つ。
段階的に行うこと。

「いきなり、全部融資ダメでーーす、じゃなくて
 小さな部分を少しづつ削っていくのさ。
 そうすれば最後には、ぜーーんぶきれいに片付く」

「なるほど、さすが先輩っす!」

立ち食いそばで後輩に指導をしてやった。
でも、そんな勉強は店を出たとたんに吹っ飛んだ。


『地球のサービス終了まで 残り30日』


空には雲で作られた文字が浮かんでいた。

「先輩……あれ……」

「いたずらでできる範疇じゃないだろ……」

この出来事はすぐさまニュースになった。
かつては恐怖の大王が下りてくるなんて予言もあったが、
今度は人間ではなく、地球発信だから信憑性もあがる。


『地球のサービス終了まで 残り29日
 これまで地球を楽しんでいただきありがとうございました』

しまいには、丁寧な断り文まで出てくる始末。
世界はあっという間にパニックのどん底に叩き落とされた。

「もう終わりよ! なにもかも!!」
「きっと地球が爆発してしまうんだ!!」
「早く!! 早くシェルターを!!」

恐怖にかられた人たちは、仕事をすべて投げ出して
シェルターづくりと宇宙への避難先探しへやっきになる。

さらには、
「きっと環境を悪化させたから地球様がお怒りになったのよ!」
などと、
地球=神説まで広まり始めた危ない団体もできていた。


『地球のサービス終了まで 残り10日』


空には容赦のない数字が出ている。
俺はというと、別にこれまでと何も変わらない。

テレビではシェルターに謎の空洞ができる欠陥をなじったり、
一番安全なシェルターはどこだとかいろいろ論争しているが
地球が終わるんだから意味ない気がする。

「ま、自分が死ぬときがわかるってのも幸せか」

エッチな画像を保存しまくったハードディスクを消し、
心残りがないように行きたい場所に行って、
食べたいものを食べたいだけ食べた。もう人生満腹だ。


『地球のサービス終了まで 残り1日』


「ついに明日か……」

シェルター勢はすでに避難し終わっている。
街には俺のような諦め勢しか残っていない。

静かなもんだ。
空の雲は「~日」表示から、秒数のカウントへと切り替わる。

10






















『地球はサービスを終了しました。
 みなさま、長年のご愛顧感謝いたします』




「……あれ?」

地球は終了した。
でも、爆発するとか酸素なくなるとか恐怖の大王などはいない。
なにも変わっていない。

すると、全国ネットで放送がなされた。
テレビにはかつて地球=神説を唱えていた人だった。

『みなさん! 私たちは地球環境保護団体です!
 地球環境をなんとか治そうとしていたところ、
 なんと! 地球環境を作ることに成功しました!』

『地球サービス終了にともなって、
 植物の成長や風がなくなりましたが、
 それは我が団体でまかなっています! もう大丈夫!』

「おおお!!!」

まさかまさかのSF展開。
こんな形で命が救われると思わなかった。
恐るべき科学の力。

地球サービス終了しても、環境をこっちで作ればいい。

「いやぁ、よかったよかった。
 地球のサービス終了なんて、実は小さな出来事だったんだ」

ふと、ガラスに映った自分に目が入る。
俺の頭上に文字が浮いていた。



『人間サービス終了まで 残り30日』