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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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悪人採用試験。

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「うむ、わが社はかなりピンチじゃい」
「なにを今さら……」

やや癖のあるしゃべりの同僚と飲んでいた。
居酒屋のテレビは政界のドンを映している。

「なんかさー、この世界って悪そうな奴が出世して
 俺みたいな真面目で一生懸命な人間って成功しないよな」

「じゃいな」

「……あ! そうだ! だったら最初から悪人を採用しよう!
 そうすれば、必ず出世するんじゃないか!?」

酒も入っていたものの、我ながらグッドアイデア。
さっそく同僚と協力して悪人たちの採用試験を行うことに。
同僚が希望者を集めてくれた。

「では、名前とこれまでの悪事を教えてください」
「じゃい」

「お、おおお、尾崎です!
 悪事は窓ガラスを割って盗んだバイクで走りました!」

「小物じゃい」
「だな、不採用」

「藤井です。15で不良と呼ばれて
 ナイフみたいに尖って触るものみな傷つけまくっていました」

「名前負けじゃい」
「うん、不採用」

「おう、あっしは反町いうもんです。
 言いたいことも言ってしまう性格ですぞい」

「ほほう、見どころはありそうじゃい」
「語尾も変だしな」

さまざまいた候補者の中で反町だけは異質だった。
殺人などもやっていた人がいたが、
悪人オーラみたいなのは反町がダントツだった。

「「 よし、採用!! 」」

俺と同僚とで採用を決めた。
仕事をし始めたころから、反町は頭角を現した。

「なんぞ、われぇ!! 真面目に仕事しとらんのかぁ!!」

無茶な要求をふっかける取引先には怒号を飛ばしまくる。
それにビビった取引先は慌てて要求をひっこめた。

「反町、すごいじゃないか!
 こんな大型契約を勝ち取るなんて!」

「ありがとうぞんじますぞ」

「まあ、どこも会社員なんて種族は
 デスクワークでこいつみたいなのとは縁遠い。
 この程度の脅しでも命の危険を感じるんじゃい」

同僚の分析はぴたり的中した。

反町は脅しているわけじゃないのに、
顔からかもしだされる悪人オーラに誰もがおびえて
いくつもの大型契約を勝ち取って、反町は出世した。

「やったな! 俺たちの作戦勝ちだ!」
「じゃな」

反町の投入は俺たちの判断。
反町の出世に合わせて、俺たちも評価されるはず。




「ええええ!? 反町が暴力沙汰!?」

評価されるはずなかった。
同僚に呼び出され現場に行ってみると、
反町が今まさに警察に連行されるところだった。

「ふざけんなワレェ!! もっと悪い奴がいる!!
 そいつは裏社会のドンなんぞ!!
 すべての不良の情報を持っている裏社会のドンぞ!」

パトカーに詰め込まれるようにされる反町。
それを見て、俺の出世はなくなったなと痛感した。

しかし、ここで諦める俺ではない。

再び居酒屋でこの件のことを反省した。

「悪人を引き込むというアイデアじたいはよかったよな」

「じゃな」

「でも暴力沙汰を起こしたせいで、うちの業績は右肩下がりだ」

「なにか新しい策でもあるのじゃ?」

「ああ、もう一度悪人を採用しよう。
 でも今度は反町みたいな事件を起こさないように
 完全に無害な不良を探そう」

「簡単な話じゃないじゃな」

「ああ、今度はもっとたくさんの応募者を集めよう!!」



かくして、総勢300人の不良が集まった。
のちにこの中からまた出世頭が出るが、その前に……

「なあ、お前どうしてこんなに不良集められたの?」

「人脈じゃい」

同僚の人脈の秘密をまだ知らない。
作品名:悪人採用試験。 作家名:かなりえずき