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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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殺人鬼になるために、まず服を脱ぎます。

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「殺人鬼をやってほしい!?」

突拍子もない申し出に俺は即答する。

「ムリムリムリ!! そんなのできないよ!!」

「え、いや、殺すのは不死身のエキストラで
 ちゃんと事前に練習もするよ」

「……は?」

「それに僕も参加するし」

今になって知ったが、友達は不死身らしい。
そういえば前にトラックにはね飛ばされたその日に
普通に合コンに参加してフィーバーしてた。
そんなからくりがあったのか。

「不死身エキストラと殺人鬼バイトは協力者さ。
 本当に誰かを殺してしまうことはないよ」

提示された目がぶっ飛ぶような値段に心が動く。

「で、何をすればいいの?」

「チェーンソーを持って、ホッケーマスクをかぶって
 不死身エキストラをやっつければいい」

「それだけ?」

「不死身エキストラは一生懸命悲鳴を上げて怖がらせる。
 これで終了だ」

仕事の内容を一通り聞いていくうちに、ますます心が動く。

「でも、なんでこんな仕事があるんだ?」

「夏は若者が肝試しとか、キャンプとかに来るわけだ。
 けど墓石を倒したりゴミを片付けなかったりするんだ」

「ああ、マナー悪いやつね」

「ところかまわずイチャついたりで風俗も乱れまくりだ」
「それはちょっとうらやましい」

「で、殺人鬼が驚かせて不法侵入させないように
 お灸をすえるわけだ」

「やります!!」

かくして、俺の殺人鬼バイトが決定した。
レンタルのホッケーマスクにチェーンソーを貸し出され
ぼろぼろの服には血のりがつけられた。

「よし! 明日はバンバン怖がらせるぞ!」

不死身エキストラとは連絡先を交換し、
当日は連絡を取り合いながら誰もいない場所で執行する。



翌日、キャンプ場について闇に潜んでいた。

「遅いなぁ……連絡来るはずなのに」

いつまで待っても不死身エキストラの姿は見えない。
あまり遅すぎて夜が過ぎては、バイトも失敗。

「くそ、何をしてるんだ」

もうこちらから連絡しよう。
チェーンソーを置いて、電話をかけた。

『ごめーーん、可愛い子が参加する合コンがあって
 どうしてもそっち行きたかったんだ』

「はああああ!?」

よりにもよって不死身エキストラ全員が欠席。

「それじゃどうするんだよ!?」

『まあ、うまく怖がらせてよ』

「上手くって……」

『マニュアルはあるからさ』

言いたいことは山ほどあったが今はどうしようもない。
しかも、マニュアルに書かれていたことはたったひとつ。

悲鳴をあげらせれば勝ち。

「ざっくりしすぎだろ!?」

いったいどうすれば……。


キャンプ場にいるのは生身の人間。
殺しによる悲鳴で怖がらせることはできない。

殺しができない以上、チェーンソーも危なくて使えない。

結局、ただびっくりさせて悲鳴をあげさせるしかないのか。
イチャイチャしている人間が、
武器を持たない殺人鬼で驚くだろうか。

「や、やばい……どう考えても笑われる」

これコスプレとなにが違うんだ。
爆笑されて終わる。

「ああああ!! 悲鳴なんてどうやって引き出すんだ!!」

追い詰められた殺人鬼の頭にアイデアがひらめいた。

「よし、服を脱ごう!」

殺人鬼で悲鳴をあげさせることができないなら、
変態で悲鳴をあげさせればいい。

狙いは女。
かん高い悲鳴をあげてもらえれば、間違いなく怖がるはず。

かぶっているマスクも変態性を高めるのに一役かってるし。


「よし!! これならばっちりだ!!」


極限まで変態に寄せて、若者たちの前におどり出た。
そして……。


『ゲイの集会』だとは聞かされてなかった。
悲鳴の前に歓声があがった。