草の根をかきわけて2代目ルパン
「くそ!! 待てーー!!」
今日も怪盗ルパンに逃げられた。
警察署内での明智の評価はもはや最底辺。
「明智君……もうルパンを追って40年じゃないか」
「俺が55歳で明智少年と呼ばれてることに
そんなに問題があるんですか?」
「いや、そうじゃなくてね……。
ルパンはもう代替わりして2代目でしょ?
ぴちぴちでしょ? 君はもうおじさんじゃないか」
署長の言いたいことはよくわかる。
そろそろ潮時と言いたいのだろう。
「いえ! ルパンは俺の手で捕まえます!!
40年追いかけたキャリアがあります!
俺以上にルパンを追いつめられる人はいません!!」
「……うーーん、それじゃ助手として入ってくれるかな? 明智君」
やってきたのは20代のイマドキな若者。
「あ、どうも2代目明智候補です」
「君は初代明智と一緒に捜査に加わってくれる?」
「はい」
ひとりでよかったが、下手に波風立てたくないので
二人で捜査することを飲んだ。
「いくぞ、若造。まずは現場だ」
「その前にネットでルパンの情報調べません?」
「あのな……普通に考えてみろ。
ルパンが自撮りしてネットにアップすると思うか?」
「それはそうですけど」
「いいか、犯人につながる一番のヒントは現場にある。
ネットなんかの不確かな情報に頼るんじゃない!」
先輩らしくしかって、現場に直行。
ルパン犯行後の現場を何時間もかけて調査することに。
靴の痕。
侵入経路。
犯行時間。
などなどなど。
「先輩……これ、腰にきますね……」
「当たり前だ。警察はデスクワークなんかじゃない。
草の根をわけて探すような大変な仕事なんだ」
数時間後、ルパンの手口を完全に把握した。
「これで終わりですね。次の襲撃に備えましょう」
「バカ。これから聞き込みだ」
「ええええ……」
被害場所の近くに住んでいる人や、通りかかった人に話を聞く。
これも大事な仕事だ。
「不審な人物? いましたけど、顔までは……」
「予告状置いてるの見たよ。顔はわからないけど」
「フツーに見たね。顔? それはちょっと……」
白昼堂々とルパンは行動していた。
ただし、その顔までは誰もわからない。
「なんでみんな顔覚えてないんですかね?」
「無理もない。すれちがう人の顔を覚えているか?」
「そういわれると、そうですね」
「聞き込みは終わりだ。帰るぞ」
時刻はすっかり深夜。
疲れ切ったところに警察署から電話がかかる。
『大変だ!! ルパンの予告状が届いた!!』
家路についていた車をUターンして現場へ向かう。
大きなダイエー美術館に予告状が添えてあった。
"今夜12時に絵をいただきます"
「ふふふ、ルパンめ余裕ぶっているようだが
これまで通りとはいかないぞ」
今はルパンの手口も把握している。
聞き込みでルパンの体型もわかっている。
もし、美術館にいる客で怪しいのがいれば一網打尽だ。
「絵の周りに警備員を増員しろ! ルパンを捕まえるんだ!!」
厳重な警備態勢のなか、ついに約束の時間。
「いよいよですね……」
「ああ」
時間になった瞬間。
突如、煙玉が落ちてきて視界をふさいだ。
「ぐ!! ルパンめ!! 絵を守れ!!」
警備員は慌てて絵の方へと向かう。
けれど、絵はすでに盗まれていた。
「くそ!! ルパンめ!!」
あまりの手早さに今回もしてやられた。
警備員が1人少なくなっていることから紛れていたんだろう。
すでにルパンは侵入していたんだ。
「ダメだ。また逃げられた。
今から追いかけても見つかりっこない」
「どうするんですか?」
「また数時間かけて証拠探しと聞き込みをするぞ」
地面に四つん這いになってルパンの残した証拠を探す。
なにか見つかれば今度こそ……。
「っておい、若造。お前なにスマホいじってる。
さっさと仕事しろ。そんなおもちゃに証拠はない」
「あの、先輩」
若造はスマホの画面を見せた。
スマホには動画共有サイトの動画がのっていた。
「通行人がルパン撮影してますね」
【絵を持って走る警備員見つけたったwwwwwwwwwwww】
この数分後、動画の男・ルパンは逮捕された。
作品名:草の根をかきわけて2代目ルパン 作家名:かなりえずき