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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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しりとり休暇はとまらない!

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「なんだと!? 会社の金が盗まれた!?」

大事件は突然に起きた。
ただし、犯人捜しはあっという間に追わった。

「経理担当はお前だったな?」

「ちょっ……違います! 俺はやってません!」

「お前しか考えれないんだよ!」

弁解の余地なく犯人は俺ということになった。

「ただし、私も上司だから部下に厳しい処罰は与えたくない」

「本当ですか……!」

「お前には『しりとり休暇』を与える!」

上司からの命により、俺はしりとり休暇をもらった。
とりあえずの犯人は俺ということであの場は収めて、
しりとり休暇中に証拠を集めるとのこと。

「しりとり……りんご……ごりら……らっぱ……」

しりとり休暇中はしりとりをしなければならない。
もし、10分以上言葉が出てこないと。

ビービービー!

「っとしまった! ぱ、ぱ、パンツ!」

警告音でたたき起こされる。

「ふぅ、でも最近休んでなかったからなぁ。
 しりとりを続けている限り休み続けられるわけだし
 ここはひとつゆっくり羽を伸ばそうか……つらら」

同じ単語を何度も使ってもいいので、
しりとりもそこまで負担にならない。

そんなこんなで3日休んだころだった。

「ああ……眠い……もう3日もまとめて眠れてない……ライチ」

しりとり警告は10おきに鳴るもんだから、
ゆっくり眠れないので疲れも取れない。

「3日もあればちゃんと犯人見つけられただろう……チーズ」

考えていたよりもしりとり休暇期間は短くなったが、
まあ別に悪い事ではないので大丈夫だろう。

「図画工作、くんせい、いるか……カン!」

ついに"ん"がついた。
しりとり休暇の音が鳴るはず……。

「あれ?」


ビービービー!


「うそ!? なんでしりとり終わってないんだよ!?」

原因はひとつ。
俺はネットで言葉を検索した。

「ンドレ(カメルーン料理)」

警報は止まった。
しりとり休暇の恐ろしさがやっとわかった。

「"ん"がついても終わらないし、同じ言葉使っても終わらない……。
 まさか、これからずっとこのままかよ!? レンズ!」

最初から犯人探しなんてするつもりなかったんだ。
しりとり休暇とは名ばかりで、本当はただの追放。

どうあがいたって、しりとりを終わらせることができない。

「この警報さえなければ……! 図面!」

必死に壊そうとしても壊れない。
外そうとしても外れない。

「だ、ダメだ……もうなにもかも……。
 俺は一生このまましりとりし続けるんだ……ンゴロンゴロ保全地域」



「それはちがう!!」

「お前は……同僚の○○! ……機械」

「会社で君が犯人だと聞いたときからおかしいと思っていた。
 今は犯人探しも落ち着いたんで君を助けに来たんだ」

「助けにって……もうしりとりは終らない。
 会社に戻ることなんでできないんだ! ……イス!」

「そんなことはない。
 しりとりを終わらせるアイデアがある」

「え……!? スイカ」

同僚はなにか秘密道具を出すのか。
それとも、精密な工具を出してくれるのか。

期待していたが何一つ出さなかった。

そして……。

「それじゃしりとりをしよう」

「……は?」

「僕としりとりをしよう」

「いや聞こえてるよ! どうして、しりとりするんだよ!?
 こっちはしりとりから抜けたくてしょうがないのに! カメ!」

「では僕からはじめよう。
 最初はそうだな……『カメ』だ」

「……メダカ」

「カマキリ」

「リス」

「スズメ」

しりとりを続けて気が付いた。

いつしか、俺のやっていた"エンドレスしりとり"と
同僚が途中から始めた"しりとり"が混ざり合ってしまったことに。

そう、もはや今やっているのは……。

「メダカ。っあーー! これ、一度使ったね。
 僕の負けだよ。はい、しりとり終了だ」

10分たった。
警告音は出ない。

「やった!! やったぁ!! ついにしりとりが終わった!!」

俺一人では終わらせられなかった。
誰かのしりとりと混同させることで、終わりを作るなんて!

「さぁ、戻ろう。仲間がみんな待っている」

「ああ、本当に長いしりとり休暇だった!」



会社に戻ると、同僚をはじめみんなが暖かく迎えてくれた。

「おかえり、しりとり休暇を終わらせるなんてすごいよ!」
「疑って悪かったな、本当に」
「やっぱりお前がいないとダメだよ」

「ありがとう、みんなありがとう」

ふと、顔を上げると上司の机が空いていた。

「あのさ、上司はどこにいるの?」


「ああ、上司なら会社の金を着服したのがわかったから、
 今はなぞなぞ休暇に出ているよ」

上司の今を想像しただけでもゾッとした。