ストーカー
そして完成車が発売され、あっという間に全世界の自動車が自動運転車に入れ替わった。
極限に能率的に道路が利用され、渋滞が無くなったのは嬉しい誤算だった。自動車は各種レーザーによるセンサーと衛星から送られてくる位置情報、さらに周りに並んだ自動車からの情報の共有という離れ業をもこなしている。
軽い接触事故さえ無い平和な日々が続いた。
しかし、その幸せも長くは続かなかった。最初は後部からの軽い接触や車間距離の無視が起こった。またある車は、持ち主の指示を無視してある特定の車のあとを執拗に追いかけるという報告があった。起きる事故で負傷者が出ていないのは幸いだったが、不便である。
各種センサーに問題は無く、もっぱら搭載コンピュータのソフトウェアを調査したが、結果は分からない。学者、技術者集団も原因を突き止めることが出来なかった。
その問題を解決したのは、学者でも技術者でもなく警察の刑事だった。
「これって、ストーカーじゃない?」
その刑事の提言を受けて、行き過ぎた人工知能化していた自動車の搭載コンピュータをヴァージョンダウンしてやっとこのストーカー騒ぎは収まった。