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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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かなりえずきにスポンサー契約!

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目の前には営業の男が揉み手をしながら座っていた。

「いやぁ、かなり様には以前から目をかけておりましてね。
 できればうちの会社がスポンサーになりたいと思っております」

「なんで俺なんですか? 作者ランキング1位でもないですし」

「いえいえ、ご謙遜を。
 かなり様はほぼ毎日更新なさっているでしょう?
 弊社としてもそのたぐいまれなる発想力と更新スピードに(略」

つまり、たくさん更新するから宣伝塔としては申し分ない。
ということだ。

「もちろん、宣伝が成功すればかなり様にも
 相応の報酬はお支払いいたします」

「そうですか、じゃ、よろしくお願いします」

かくして、かなりえずきにスポンサーがついた。

「とはいえ、小説ではございますから、CMはありません。
 なので、弊社の製品を内容に入れていただきたいのです」

「というと?」

「弊社で提供している美白化粧水と、
 弊社が技術提供している新型ボールペンと
 弊社で企画されたラーメンです」

「わかりました、その代わりその商品にも
 俺の宣伝を加えて良いですか?」

「……一応、こちらでもチェックします」

1部分だけ共通の変更を加えた。
営業の男は顔をかしげている。

「え? どこ変えたんですか?
 ロゴも、デザインも、商品説明も変わってない……」

素人がクソださいデザインぶちこんでくるかと冷汗ものだったが、
素人目にもわからない変更なら問題ないだろう。
ブラックライトで浮かび上がるとかだとしても。

その後、かなりえずきの作風は激変した。

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女はその○○株式会社の化粧品を手に取り顔に振りかける。

「な、なにこれ!? 肌が若返っていく!」

しわだらけだった顔には潤いがよみがえり、
慌ててその感動をボールペンでしたためる。

「なにこのボールペン!
 こんなに焦って書いているのに、少しもインクがぶれない!」

感動で声を上げるとすっかりお腹が減った。
家にあるのはいつものお気に入り。

「ふふ、やっぱりこの○○食品のラーメンよね。
 野菜との相性とスープのバランスが最高よ」
------------------------------------

一見、闇鍋にも近いような怒涛の宣伝ラッシュ。
けれどその潔さが読者にウケた。

「いやぁ!! 素晴らしいですよ! かなり様!
 実はまだまだ宣伝してほしい商品があるんです!!」

「え……!?」

「大丈夫ですよ! あなたなら上手く料理できます!」

「……わかりました、それじゃまた変更入れて良いですか?」

「もちろん!!」

一応変更は加えられたはずらしいが、やっぱりわからない。
そんなわけで、宣伝商品の品目がまた増えた。

------------------------------------
「刑事さん! 私はたしかに○○会社の
 コットン100%のコートを着た男をみたんです!!」

「なにぃ!? ○○会社のコートだと!?
 あの肌触りが好評のこだわりのコートだろう!」

「そして、○○会社が運営しているイベント会場に向かったんです!
 そこで新商品の化粧品を試していました!!」

「なにぃ! 男でも試したくなるほどの
 ○○会社のあの化粧水をか!! おのれぇ~~」

2人は○○会社が企画開発を行った
冬でもすべらないタイヤを付けたパトカーに乗り込んだ。
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まだ3品目だったころは笑って許した読者も、
あまりに露骨な宣伝でさすがに見切りをつけ始めた。

「もう、こいつ終わりだな」

それはスポンサー側も感づいていた。

「かなりえずきとかいうあの作者、もうだめですね。
 ランキング順位も下がってますし、更新頻度も落ちてます」

「品目増やして話が回せなくなったんだな。
 まぁ、どのみちそろそろ潮時だったんだよ」

「やっぱり創作物での宣伝は難しいですね。
 いいアイデアだと思ったんだけどなぁ」

なんて言いながら、
あれだけ褒めちぎったはずのスポンサー契約を即切った。

スポンサーたちはまた新しい宣伝塔を見つけた。

「いやぁ、はじめてぶちょー様の動画は
 いつも弊社全員で拝見させていただいてますぅ!」

「本当ですか! 嬉しいです!!」

「つきましては、ぜひユーチューブの動画に
 我々の商品のCMをさせていただきたいなと」

「ええ、かまいませんよ」

スポンサーたちは、新しい宣伝塔として
「売れっ子ユーチューバ―」を見つけた。

「よしよし、あとはこれで動画の再生回数が上がれば
 それだけわが社の製品の宣伝ができるというわけだ」

「最初からあんな素人作家ではなく、
 こっちにしていた方が波及効果ありましたね」

「だな」

しかし、数日後スポンサー営業達は社長に呼び出された。
顔を見るなり、説教されることは容易に想像がつく。

「お前ら馬鹿か!! いったいなんてことをしてくれたんだ!!」

「え、えっと……?」

「新人教育の時から言っているだろう!!
 "逃した魚の大きさは見極めろ"と!!」

「状況が飲み込ません……!?」

「これを観ろ!!
 お前らがスポンサー撤退した後も
 かなりえずきは着実に認知度を増やしているじゃないか!!」

「これはいったいどういう……」

「知るか!! 貴様ら、こんな大事な宣伝塔との契約を
 あっさり切りやがって……ゆるさーーん!!」

激昂社長のおしかりは何十時間も続いた。
食事もとらずに続いたので拷問といっても差し支えない。

やっと解放された営業の人たちは釈然としなかった。

「あの、かなりえずきとかいうやつ。
 いったいどうしてスポンサー契約切れてから認知度上がったんですかね?」

「ふん、うちの商品を入れる必要がなくなって
 自由にかけるようになったからだろ」

「過去作見ましたけど、どれも投稿作は似たり寄ったりで
 劇的に面白くなったりしてませんでしたよ」

「まったく不思議だ……」

二人は頭に「?」を浮かべた。
社員割引を使って会社で販売されてる商品をレジに出した。

ピッ。

バーコードがスキャンされる。


『カナリエズキ ¥280』
『カナリエズキ ¥280』
『カナリエズキ ¥360』

「かなりえずき、3点で920円になります」


「か、かなりえずき!?」

レジの電光板には見知らぬ文字が並んだ。
たかだか1回の買い物で4回も連呼されるその名前は、
いったい何なのか気になって仕方がなくなる。

宣伝としてはこれ以上ない。


「ま、まさかの……あの作者が変更した部分って。
 バーコードの部分!?」


その後、ユーチューバ―が商品を宣伝するほど
かなりえずきの認知度が爆上がりする怪奇現象が報告された。

からくりを知っているのは、もう会社の人しかいない。