小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

20歳からはじまる宗教戦争

INDEX|1ページ/1ページ|

 
20歳になると何ができるか。
酒が飲める。パチンコができる。
エッチなビデオが借りられる。投票ができる。

そして。

自分の宗教が作れる。

「よぉ、お前。どんな宗教作るの?」

「いや……まだ決まってないけど」

「ハハハ! お前みてぇな弱虫が作る宗教なんざ
 どうせ誰も入信しやしないさ!」

そいつは昔からのなじみだ。
友達と言えないのは、こういう性格だからだ。

「君こそ、どんな宗教を作るか決めた?」

「教えねーーよ、ばぁぁぁーーか」

「自分の好きなものの信者を集める宗教とか?」

「俺はたしかにカメラも車も女も好きだけどよ。
 この3つがありゃ有無を言わせず飛びつく。
 だが、それと宗教は関係ねぇよ」

そいつは市役所に宗教を申請しにいった。
信者を集めれば集めるほど、買い物とかで得をする。
遊園地でも並ばずに入れるようになる。

僕も、たくさん信者が集まる宗教にしなきゃ。

「でも、宗教のしつこい勧誘は嫌いだからなしにして……。
 みんな楽しくできるような優しい宗教にしよう」

僕が作った『慈愛教』はほかの宗教を否定せず、
攻撃せず、厳しい決まりもない最高に優しい宗教になった。



数日後。

「よぉ、宗教の調子はどうだよ?」

「う、うん。やっと1人信者ができたよ」

「1人!? あっははははは!! だろうな!! だと思ったよ!」

そいつはイヤミたっぷりに笑った。

「俺の宗教・大魔王教はもう10万人の信者だぜ!?
 これがてめぇと俺の格のちがいってわけだよ!!」

10万倍も差をつけられてしまった。
いったい、僕の宗教の何が足りないのか……。

教会に戻って大魔王教について調べてみることにした。

「命令には絶対服従、来る者拒まず去る者許さず……。
 す、すごい宗教だ……」

まさに僕と真逆の宗教。
攻撃性と厳しい規律で信者をしばっていた。

それでも、信者の数は今こうしている間にも増えている。

そこで僕の『慈愛教』の唯一の信者に聞いてみることに。

「あの、どうして大魔王教は人気なのかな」

「はい。厳しさの反面、そこに順応したことで得られる
 特別感、優越感があるのでしょう」

「君は……僕の宗教の魅力はなんだと思う?」

「ないです」

「えっ」

「私が入ったのはひとえにあなたに一目ぼれしたからです。
 願わくば、信者との一線を超えたくて入りました」

「し、下心ぉ!?」

結局、ある意味で「信者」は誰もいなかった。

「このままじゃ大魔王教に全部支配されちゃう。
 なんとかして僕の信者も増やさなくっちゃ」

「すばらしいです、教祖様」

そこで、大魔王教にならって緩かった戒律を厳しくした。
これならきっと信者も集まってくるはず。



「教祖様、入信希望者がどんどん減っています」

「えっ!? な、なんで!?」

「"まったりした空気感がよかったのに"
 "戒律厳しいなら入らない"
 "方針ブレブレで信用できない"……とのことです」

僕は誤解していた。
大魔王教とはそもそもターゲットが違うことに。

僕の慈愛教に集まるのは優しさを求めている信者。
なのに、厳しい宗教にしたら集まるわけがない。

中華料理の看板でフランス料理を出すようなもの。

「教祖様! 大変です! 外に大魔王教の信者が!」

信者1号がカーテンを開けると、
外には地面を覆い尽くすほどの大魔王教が待っていた。

どの信者も手に凶器を持っている。

「大魔王教の名物"他教狩り"です!
 このままではつぶされます!
 はやく私と付き合ってください!」

「最後の要求は関係ないような……」

「ですが、このままじゃ……!」

大魔王教の信者たちはどんどん押し寄せてくる。

「僕にアイデアがある」

僕は慈愛教の戒律を書き換えて、電話をかけた。

「なにをする気ですか!?」

「信者を集める」

「この状況でやることじゃないですよ!」

ついに大魔王教の信者たちがなだれ込んできた。

「も、もうだめだ――!!」



その瞬間、大魔王教の信者たちはスライディング土下座をした。

「「「 ははーーっ!! 」」」


「……あれ? 何が起きたんです? 他教狩りは?」

「めっそうもない!! 恐れ多いです!」

信者1号は化かされたような顔を向けた。

「教祖様、いったいどんな魔法を使ったんです?」

「魔法じゃないよ。ただ1人、信者を増やしただけさ」

まもなく信者2号が到着した。


「ここが慈愛教だな!! 車は!? カメラは!? 女は!?
 慈愛教に入ればもらえるんだよなぁ!!」

大魔王教の教祖は興奮気味にやってきた。


「大魔王教の上位にある慈愛教。
 それに反乱を起こすなどめっそうもございません!!」