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猫山亭灰色
猫山亭灰色
novelistID. 60770
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昔ながらの味

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<ヨーグル>

先日、友人たちとたわいもないおしゃべりをしていた際、
子供の頃に好きだった駄菓子の話になった。

すると出るわ出るわ、
全員がまるで駄菓子評論家でもあるかのごとく、
自説を語りはじめる。
最初に話を振ってしまったのは私だったので、逆にちょっと慌ててしまった。

私も子供の頃、少ないお小遣いを握りしめて駄菓子屋に通ったクチだ。
当時、行きつけだった駄菓子屋は現在、すでに潰れてしまっているが、
あの頃の思い出は鮮明に思い出せる(授業で習ったことは、あまり思い出せないのが少し悲しい)

人間の味覚というのは、子供の頃に決まってしまうと本で読んだことがある。
『舌は三代』というのもそういった意味合いで、ということなのだろう。
男なんてのはそれがどんな偉人でも、どんな大会社の重役であっても、
いつまで経っても自分の母親の味が一番なわけだし。

そういう点で我々は母親と駄菓子の呪縛(まさに呪い!)からは逃れられないのだろう。

そして昨日、駄菓子話で盛り上がっていた人間の一人が、問屋でごっそりと各種の駄菓子を仕入れてきてくれた。
そこにいた皆が狂喜乱舞したのは、言うまでもない。

私は当時大好きだった『ヨーグル(ビニール蓋に象の絵が描いてあるアレ)』をまず手に取った。
子供の頃、大好きだったなぁ。
蓋の裏に当たりはずれが書いてあって、当たりだともう一個もらえたりして・・・。

木製のスプーンをしっかりと握る。
最近はスーパーでくれるスプーンもプラスチックのものが多くなっており、
このタイプを使うのは久々だ。
何か嬉しい。

この木製スプーンでバニラアイスなんかを食べると、
味が染み込むので、アイスを食べ終わってからずっとチューチュー吸っていたものだ(当然、アイスの蓋の裏も舐めていた)。
実に、意地汚い子供だった・・・。
しかもあれ、バニラアイスもアイスクリームじゃなくて、ラクトアイスだったんだよな(無駄に遠い目)。

一口、食べてみる。
ヨーグルト風味が薄い。実に薄い・・・。
言われてみて、やっとヨーグルトとわかるような。
そして、油感が凄い。まるで舌が油の膜に覆われたような。

二口目、
状況は更に悪化してしまったようだ。
今、他の菓子を食べても、たぶん味がわからないというくらいに舌が油にまみれている。
こんなはずでは・・・。

原材料を見てみると主成分はグラニュー糖とショートニングで、
それにヨーグルトの香りを付けているらしい。
乳由来の原料がまさかゼロとは!

ただし、いくら昔のこととはいえ、単価10円で売っていた商品だ。
原材料にお金はかけられないだろう。
それはわかる。一消費者としてもよくわかっている。

でも、当時、私はこれを1日に2個も3個も食べていたわけだ。
胃弱な今からは考えられない。よく胃もたれしなかったな。
若さってすばらしい。。。

ふと我に返るとそこには、まだ半分以上が残っているヨーグルと、
途轍もない敗北感があった。

ヨーグルは悪くない。
決して悪くない。
この場合、むしろ悪いのは、私の成長そのものということになるのだろう・・・。

もしくはいつの間にか、味が変わっていたのか、
誰かご存知でしたら、教えてください。
眠れなくなりそうです。
作品名:昔ながらの味 作家名:猫山亭灰色