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 筒状になっている皮の本体。それの真ん中に緑色のキラキラ光る、クリスタル!
「風の篭手!」
「ピンポーン!」
 笑いながら、その手の中のキラキラをひとつずつかざして見せる。
「明るくて元気なタカヒサ。優しくて思いやりのあるサトル」
 サトルのアームレットだ!
「運動神経抜群のリョウスケ」
 リョウスケのアンクレット!
「頭のいいソウイチロウ」
 ソウイチロウの金冠!
「み〜んなぼくが貰ってあげる」
 って事は、みんなは……?
「ね、明朗快活で優しくて、運動が出来て、成績優秀って、カッコイイよね!」
 クスクス笑いながら、まるで踊っているかのようにクルクルと回る。
「みんなは、どこ?」
「さぁ?」
 “さぁ?”って、こいつ!
「ぼくが“みんな”だよ」
「え?」
「ぼくがみんなを連れて生まれ変わるんだ」
 生まれ変わるって?
「みんな、は?」
 ユウタが両手いっぱいのアイテムをかざす。
「ここに篭手があるのに、君がそこにいるのは不思議なんだけどね」
 アイテムがボク達って事?
「君達の命を貰って、ぼくは元の世界に戻るんだ」
「ボクらは?」
「ここに残る。痛みも苦しみもない。何にもない世界に」
 何もない、世界?
「あ! みんな一緒だから、淋しくなんかないよね」
 ちょっと待って! それじゃ……。
「それじゃ、現実の世界のボクらは?」
 ボクが問い掛けると、クスリとユウタが笑った。
「思い出してみてよ」
 ここへ来るまでの現実の世界。ボクは病室を抜け出して院内を歩き回って、そして、戻ってきた病室で、発作を起こした。発作止めもナースコールも間に合わなくて……。嫌な思いが脳裏をよぎり、ボクはユウタを見上げる。
「飛んでいってしまう前に君を捕まえて、魂を元気な状態にして、ぼくの中に取り込む。元々弱っていた命だから、ひとつじゃ足りないんだ。だから……」
 アイテムがキラキラと光る。
「必要だったってわけ」
 そう言いながら、アイテムを闇の中へと差し出す。モヤモヤと渦を巻く闇の中で、一層輝く四つのクリスタル。あの輝きはボク達の命の輝き。宙に浮くユウタに手を伸ばしてみるけれど、喘鳴の苦しさに身が縮んでいく。
「大丈夫だよ。ぼくが生まれ変われば、苦しみはなくなるから」
 そして、“ごめんね”と笑ってみせる。
「バイバイ。タカヒサ」
 闇の中に生まれた光の中へと一歩を踏み出すユウタ。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒