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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ここで会議をはじめます!

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「まずいまずいまずい!
 明日が締め切りだっていうのに、
 全然仕事のノルマが達成できない! 時間が足りない!」

死に物狂いで仕事をしていると、
地獄からの呼び出しがかかった。

「おい、佐藤。会議始めるぞ」

 ・
 ・
 ・

会議室に移動すると、さっそく議題が話し合われた。

「えーーでは、定期会議をはじめます。
 なにか取り立てて問題はありますか?」

「あの……仕事が片付いてないんです。
 できれば……そのぅ、早く作業に戻らせてもらえると……」

「ああ、わかった。ほかには?」

毎日この定期会議は行われている。
そんなに毎日天気のように仕事の状況が変わることはない。

当然、議題はないかと思ったが……。

「そういえば、あれ見たか? 昨日の野球」

「あそこのでピッチャー交代は悪手だよなぁ」

会議はその後も続いた。
4時間後、解放されて自分のデスクに戻る。

「はぁ……よし、これで仕事に戻れるぞ!
 なんとしても締め切りまでに間に合わせないと!」

すでに就業時間は過ぎている。
サクッと残業を済ませて帰ることにしよう。


「おい、佐藤。このあと食事会だから、来い」

「え゛……」

顔がひきつった。

「ど、どうしても……ですか?」

「当たり前だろ。取引先との食事以上に優先する仕事なんてない」

「ソウデスヨネー……」

デスクに山積みにされた書類を見送って居酒屋へ向かった。


「それで、今シーズンはきっと優勝しますよ!」

「いやぁ、宅築建設様には勝てませんなぁ。ささっ、もう1杯」

「おっととと、いやぁ悪いねぇ。ガハハハ」

帰りたい。
間違えた、戻りたい。

「ところで、佐藤君。君はさっきからお茶ばかりで
 ぜんぜん飲んでないじゃないか。ほら飲みたまえ」

「いえ、私はこの後も仕事が……」

やんわり断ろうとした矢先、上司のギラリとした目線が刺さる。
"コトワレバ コロス"

俺はすすめられるがままに酒をかっくらった。
結局、その食事会で話されたのは
野球とゴルフと車と野球と競合他社の悪口だった。

「佐藤、今回の食事会は本当に価値があったな!」

「そ、そうなんですかね……うぷっ」

12ラウンド戦ったボクサーばりのふらつきで会社に戻る。
揺さぶられたような頭を引きづってデスクについた。

「よ、よし……なんとか……今日中に……」

そこからの記憶はほとんどない。
ぼやけた目と、ぐらつく頭で数時間。

誰もいないオフィスでなんとか仕事を終わらせた。

「お……終わった……間に合わせた……ぐふっ」

終電はとっくに過ぎて、タクシーで帰宅。
待っていたのは暖かい妻ではなく、
なまはげにも近い表情をした妻だった。

「遅い!! こんな時間までなにしてたのよ!!」

「仕事だよ……」

「はぁ!? こんなに遅いなんておかしいでしょ!!
 ちょっと家族会議をひらくわ!! 座って!!」

「え、ええ……!?」

深夜3時。
リビングに座って家族会議という名の処刑がはじまった。

「いつもあなたは仕事仕事ってばかり!」
「家庭のことなんてどうでもいいのね!」
「会議なんて、食事なんて放っておけばいいじゃない!!」

朝になっても家族会議は続いた。
さすがに仕事に間に合わなくなるということで
一睡もしないまま俺は仕事へと舞い戻ることに。

「な、なんだろう……どっちが我が家かわからないぞ……」

会社のデスクにつくなり、会議の告知が入った。

「これから大事な緊急会議をはじめます!!
 全員、会議室に集合!!」

「い、今からぁ……!?」

会議室につくと、重役が梅干しのような顔で座っていた。

「諸君。今日の会議は極めて大事な用件だ」

全員にぴりりとした緊張感が走る。

「最近、わが社の業績が落ちている。
 簡単に言えば、仕事効率が悪いということだ。
 それについてなにか原因はわかるか?」

「わからないですねぇ」
「いったい何が原因なんだ……」
「我々はちゃんと仕事してるのに」

全員が顔を見合わせた。

「いや、会議多すぎるからでしょ!?」

これにはさすがの俺もツッコミを入れた。

「毎日、朝から会議ばかりで仕事が進んでません。
 それが原因なんじゃないですかね?」

「ふむ、そうかもしれないな。
 では本当にそれが原因なのか会議をしよう」


"なんで会議があると仕事ができないのか"会議がはじまった。

6時間もの会議の結果、会議は必要だという結論が
野球やサッカーの話のついでに決定された。

「会議は極めて大事だ。こうして重要な決定を下せる」
「それに顔を合わせることでお互いの状態もわかる」
「円滑な仕事をするために会議は必要だ」
「逆に会議ナシで仕事を進めることなどできない」
「仕事はチームプレイだ。会議と飲み会と休日ゴルフは欠かせない!」
「ムダな会議などひとつもない! すべてが有益だ!」

「……わかりました」




「それじゃ、今後は会議の内容すべてを
 一言一句、議事録にして残すようにしますね」

会議の内容が記録に残るようになってから、
会議で呼び出されることはめっきりなくなった。