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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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オシャレ王の免罪符

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「わわわっ!! 急に降ってきやがった!!」

台風の接近なんだか知らないが天気は急に大荒れ。
せっかくセットしてきた髪も、一張羅も全部台無し。

「はぁ……もう最悪だ……」

「おしゃれ!!」

「……え?」

ふと、見ると同年代の男がキラキラしている目で
ずぶ濡れの俺を見ていた。

「その髪型……その服の吸い付き、おしゃれだ!!」

「え、ええ?」

「ちょっとマネしてもいいですか!?」

「悪くはないけど……」

男は嬉しそうに俺と同じような髪型と服に合わせて去っていった。


翌日、朝のニュースで歯磨き粉を吹きだした。

「今、若い人の間で"濡髪男子"が流行っています!!」

画面の中では昨日の俺のように髪を濡らして
服もぬれさせたようなのがおしゃれだと報道されていた。

「これ、俺のじゃん! こんなにも伝播したのか!?」

噂の広がり方に感心していると、玄関に報道陣が押し寄せた。

「濡髪の伝道師さん! コメントお願いします!」
「どうやってあのセンスを生み出したんですか!?」
「時代の先駆者となった気持ちをどうぞ!!」

「……そうですね、いつかこんな日が来るかと思ってました」

俺はドヤ顔で答えた。

その日から「濡れファッション」は新しいトレンドとなり、
男女問わずそのファッションをすることが「基本おしゃれ」となった。
まるで一時期のルーズソックスだ。

俺はというと……。

「まずい、なんも思いつかない……」

報道陣たちからは次のトレンドはなにか。
新しいファッションアイコンは何にするか。

ファッションリーダーとして俺にかける期待は大きくなる。
そんなの思いつくわけない。

「このまま、ずっと付きまとわられるのも嫌だし
 もう俺がただの人だってことを伝えるしかないな」

そこで、今度のトレンドはズボンの上にステテコ履くという
誰がどうみてもダサすぎるファッションを提示した。
これなら俺にセンスないことがわかってもらえる。

「素晴らしい!! この予想を超えたセンス!!」

……はずだった。


時代のファッションリーダーの俺が提示したパンツスタイルは
瞬く間に広がり、誰もがなにも疑うことなく取り入れた。

「あのカリスマがやっていたんです!」
「これやっているとおしゃれなんですよ!」
「カリスマと同じファッションでイケてるでしょ!」

これに味をしめたので
次の新しいファッションは「裸」ということにしてみた。

もちろん、カリスマの言葉に世間はあっさり受け入れた。
スクランブル交差点では裸の男女が行き交い、電車でも裸丸出しだ。

「えーーでは。法律を改正しまして、裸でも犯罪にならないとします」

あまりに裸の人が増えすぎたのもあり、
摘発するどころか法律が改正されるほどの騒ぎになった。

「ふははははは!! もう俺は神に等しい!!」

俺の影響力はファッションに留まることはない。
何か一言言うだけで世界はそちらに傾く。

今や世界を動かしているのだ俺だ。
なにをしても許される。

それがおしゃれだと認識させれば、
どんなことだって世間が正当化してくれる。

「この影響力がある限り、俺は無敵だーー!!」

  ・
  ・
  ・

数日後、「俺」というオシャレは影も形もなくなっていた。

いかなる犯罪もオシャレとして許されていたのに、
ただ1つのことだけは許されなかった。


「ああ、浮気の人でしょ? あんな服マネしないよ」
「だって浮気したもん。最低でしょ」
「浮気する人なんて人間じゃない」
「ホントにクズだよね。生きてる価値ない」
「パンツファッションとかダサすぎでしょ」
「浮気するやつがファッション語るな」


「ちょっ……浮気した人に対して厳しすぎない!?」


カリスマから「浮気したゲスゴミクズ」へと
格下げされた俺の言葉はもう誰にも届くことはなかった。